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2020.09.16
「同じ賃金で所定労働時間内に業務を完了する従業員Aさんと、所定労働時間内で同じ業務を完了できず時間外労働をして、やっと業務を完了する従業員Bさんを比べると、生産性が高いのは明らかにAさん。しかし、Bさんには時間外手当を支払う必要があるので、受け取る賃金は生産性の低いBさんになる。これって、『能力のある人に多く賃金を支払うべき』という考え方に矛盾していないですか。」という疑問をよくいただきます。
経営者の立場で考えると「確かにその通り。」とお答えしたいのですが、現行の労働基準法では従事した労働時間への対価として、賃金を支払うこととなっているため生産性の低いBさんに時間外手当をプラスして支払わざるを得ません。経営者としては「生産性が高いAさんに申し訳ない。」という気持ちになるのは当然ですから、「何か良い方法はないか。」と相談されることも理解できます。
もちろん、AさんとBさんの二人の生産性の差は、今後の昇給や昇格の差となって明確に表れてきますが、労務管理上の問題として毎月、生産性の低いBさんの時間外労働をそのままにしておくことは絶対にあってはなりません。何故なら、Bさんの生産性向上に向けた助言や指導がなされないと、Bさんの生産性は大きく改善されることはありません。これはBさんのスキルの停滞を意味し、ひいては市場価値を低くしてしまいますから、社会人人生にとって大変不幸なことです。
一方、Aさんも自分より生産性の低いBさんに一時的とはいえ、自分より多い賃金が支払われていることが面白いわけはなく、当然不満を感じるはずです。「生産性を高めず、Bさんと同じように時間外手当を稼ごう。」と考えるかもしれません。そうなると、組織を構成する従業員の生産性向上に対する考え方が後ろ向きになり、会社の生産性向上が難しくなってきます。経営者として、これは絶対に避けなければなりません。
では、どうするべきかですが、時間外労働を発生させない、すなわち「ゼロ」ベースで労働時間管理を行うということです。「時間外労働ができない。」ことが前提であれば、所定労働時間内に業務を完了しようとする意識が醸成されます。「納期の逆算」や「上司への早期の相談」「同僚への協力依頼」などを考えるようになります。どうしても時間外労働をせざるを得ない場合は、その従業員だけでなくチームや部署全員で手分けして行うべきです。公平な労働条件であれば、問われるのは同じ時間で残した成果だけですから、これほど公正なものはありません。
「時間外労働をゼロにするという取り組みは、人手不足の現状では机上の空論だ。」とのご意見もあるかもしれませんが、「時間外労働を40時間から20時間に削減しよう。」といった取り組みでは、ダイナミックな発想は生まれません。「時間外労働をゼロにする。」ことによってもたらせる効果を考えれば、前向きに取り組むことができるのではないでしょうか。
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