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2020.10.07
「雇用の流動化」「働き方改革」など、最近の労務課題を考えると会社における「人事」の役割の重要性は過去と比較すると格段に上がってきています。巷では「戦略人事」という言葉で「人事評価制度の再構築」や「雇用形態の多様化」などに「戦略」性を取り込んで、具体的に取り組む必要性を掲げる企業もあります。
確かに「戦略人事」という視点は、規模の大小に関わらず、企業として今後ますます重要な「人事部」の業務になってきます。しかしながら、一方で「人事部」が日々の社会保険手続きや給与計算、採用面接などの「人事実務」に追われて、「『戦略』どころではない。」という会社がまだまだ多いのも事実です。
人事担当者が「人事実務」の処理に日々忙殺されていると、「従業員を採用しても、雇用契約書の取り交しをしていない。」「給与計算の間違いが多い。」「就業規則は5年前から改訂されていない。」「パワハラで有名な管理職が処分されずに職場に居続けている。」「労働基準監督署から36協定の上限を超える残業について改善指導を受けている。」など、その会社の人事管理上、あってはならない事態が起こりかねません。
「人事実務」の基本的なことが行われていないと、従業員からは「入社してから日数が経過しているにもかかわらず、まだ健康保険証が届かない。」「口頭で約束した賃金が支払われていない。」などの不満が生じ、「この会社で仕事を続けても大丈夫だろうか。」といった不安や、「この会社は法律や約束を守らない、いい加減な会社だ。」といった不信につながっていきます。そうなれば当然、従業員の「やる気」といった仕事へのモチベーションは下がり、生産性の低下を招くことになりかねません。
上記のようなことが起きるのは、「人事部」において「人事実務」が体系化されておらず、マニュアルのようなものに言語化されていないため、担当者個人の経験やスキルに依存して業務が属人化してしまっていたり、事案が発生したときに対応して事務を処理するといった「場当たり的」になっていることが要因として考えらえられます。
以上のような状態に「人事部」が陥らないためにも、まずは、基本的な「人事実務」を確実に履行できるように「仕組み化」し、「言語化」して人事担当者が誰であっても遂行できるように業務の「質転換」を図るべきです。この体制が確立して初めて、従業員からの会社への信頼を得ることができるのではないでしょうか。
「戦略人事」は将来の「人事」のあるべき姿ですが、実際には「人事部」が機能していなかったり、「人事部」と従業員との信頼関係が形成されていなければ、知恵を絞って描いた「戦略」は実行されず「絵に描いた餅」にしかなりません。まずは「基本的なことができるようにする。」から始めませんか。
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