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No.17話:非正規従業員には「賞与」と「退職金」を支給しなくてもよいのか。

 先週は、いわゆる非正規従業員の「同一労働同一賃金」に関する5事件の最高裁の判決がありました。特に10月13日では「大阪医科薬科大学事件」の大阪高裁判決(アルバイトに賞与を支給しないのは不合理で、正職員の支給基準の60%を下回る相違は不合理で認められない。)、および「メトロコマース事件」の東京高裁判決(契約社員に正社員と同一の基準に基づいて算定した額の4分の1に相当する額の退職金すら支給しないことは不合理で認められない。)については、その判決を変更しそれぞれの事件での「賞与」、「退職金」を支給しないという待遇の相違が「不合理と認められるものに当たらない。」としました。

 最高裁の判断は、2審(高裁)の判決が当然支持されると期待していた労働者側に大きな衝撃をもたらし、報道でも大きく取り上げられました。この判決の是非については、労働法を専門とする学者でも意見の分かれるところで、このコラムでは論評をいたしませんが、問題はこの判決を知って、一部の経営者が「非正規従業員には『賞与』と『退職金』を支給しなくてもよい。」と受け取ってしまっていることです。これは明らかに誤った考え方です。

 まず「同一労働同一賃金」の考え方は、労働契約法旧20条(現在、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」第8条、第9条に規定)に基づくもので、正規従業員と非正規従業員の「不合理な」待遇差を無くし、公正な待遇の実現を目指すものです。

 では、何をもって「不合理」であるか否かを判断するのでしょうか。実はその判断基準は明確に規定されておらず、「①職務内容(業務の内容と責任の程度)」「②職務内容・配置の変更範囲」「③その他の事情」をもって判断することとなっており、最終的には事案ごとに司法(裁判)での審議を経て判決によって示されることになります。従いまして、会社ごとの正規従業員と非正規従業員の待遇は千差万別ですから、今回の最高裁の判決がすべての会社に適用されることはありません。

 極端な話、前述の①と②の内容が、正規従業員とパート従業員で全く同じであれば「均等待遇」が求められますから、パート従業員には正規従業員と同じ支給基準で「賞与」や「退職金」を支払わなければなりません。

 大切なことは裁判例を短絡的にとらえるのではなく、ご自身の会社の実態を正確に認識することです。すなわち、基本給、諸手当、休暇などの福利厚生などの正規従業員の労働条件を総合的ではなく、項目を個別に検証し非正規従業員への「支給の有無」「金額などの差異」などがあれば、その項目をピックアップし、その理由をまず文章化することです。そして文章化された理由が理屈に合っているか、つまり「合理的」であるかを確認し、「合理的」でない場合は非正規従業員の待遇を見直すべきです。

 ご注意いただきたいのは、非正規従業員に支給しない理由を無理に作り上げることがないようにすることです。無理に作った理由は「合理的」でも何でもなく、ただの「へ理屈」でしかありません。このような「へ理屈」は裁判で争った場合、当然明らかにされますからくれぐれもご注意ください。

いずれにしても、中小企業における「同一労働同一賃金」への対応は、来年の4月1日までに完了しておく必要があります。時間が余りありませんので、できるだけ早く対応を図ってください。

 

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