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No.35話:会社はメンタルダウンした従業員のケアをどこまですべきか。
2021.02.24
家庭や職場の人間関係、仕事のストレスで「うつ病」などメンタルダウンを起こし、会社を欠勤される従業員が大変多くなっています。発症した病気の種類や個人の病状にもよりますが再度、仕事に従事できるように体調が回復するには相当の日数を要する人もいます。
このように従業員に長期で療養が必要な事態が生じた場合に、会社として検討すべきことが「休職」の発令になります。ここで重要なことが「休職」の意味です。労働契約において従業員には労務を誠実に提供する義務があります。(会社は提供された労務の対償として賃金を支払う義務があります。)従って、労務提供ができない状態になれば「債務不履行」により会社は労働契約を解除することが可能になります。
しかしながら、会社によっては正社員のように長期で雇用することを前提とした労働契約の場合、病気療養の期間が短期で近い将来に職場復帰の見込めることを前提に「休職」制度を任意で設定しています。「休職」制度はあくまで任意のものですから、その期間は会社ごとにことなりますし、制度を設けていない会社もあります。また、「長期雇用」が前提ですからアルバイトやパート従業員のような期間雇用者は対象外としている会社がほとんどです。
いずれにしましても、
「休職」の発令の可否は、①「会社が定める休職期間での療養により体調の回復が見込めるのか。」②「元の仕事に従事できるまでの体調回復が見込めるのか。」を主治医、および産業医の意見をもとに判断しなければなりません。
万が一、休職期間を経ても到底回復が期待できない場合は、労働契約の解除を決断しなければなりません。(もちろん、本人やご家族と十分話し合う必要はありますが。)
「せめて休職期間が満了するまで会社に籍を置かせてあげてもいいのでは。」というご意見もありますが、いたずらに「休職」を発令しても「休職期間が満了するまでに病気をなおさなければ」といった無用のストレスを発生させ、かえって病状を悪化させたケースもあり良い選択ではないと思います。
会社が優先的に考えるべきは「事業運営に必要な労働力の確保」であり、企業体力を超えた従業員のケアではないと思います。
(体調の回復は従業員本人が主治医の支援を受けながら取り組むことです。)
また、「休職」が終わり「復職」に際しても、その可否は主治医や産業医の所見を参考に会社が判断すべきです。従業員が従事する仕事の内容を知らずに従業員から求められて「職場復帰可能」と診断する主治医もあります。従業員から「復職」申出があった場合は会社から主治医の面談を求め、従業員が従事する仕事の内容を説明し職場復帰に際して何らかの条件が必要になるかを確認すべきです。
この時に会社で提供できない軽易な業務や無期限の短時間勤務などの条件が示された場合は、「復職は難しい」と判断せざるを得ません。「復職」の条件はあくまでも「休職前の業務に従事できるように体調が回復したこと」です。また、主治医から「休職」の延長を求められる場合がありますが、「休職」発令時と同じように所定の延長期間により体調回復が見込めないのであれば、延長に応じる必要はありません。
病気をされた従業員が療養し、体調が100%回復して仕事に復帰されることを願ってやみません。
しかし、会社は医療機関やケアセンターではないことをしっかり認識してください。
これは従業員はもとより、経営者も十分理解しておくべきです。つい、従業員を慮って会社の制度を超えて対応しようとする経営者もいますが、会社の経営の首を絞めることになりかねません。大変「冷たい。」と思われるかもしれませんが、「休職」「復職」については冷静な目で判断をするように心がけましょう。
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