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No.52話:あなたの会社は、従業員が定年まで在籍することを望んでいますか。

 ある有名な会社では従業員が40歳までに退職し、独立もしくは転職して別の環境で活躍すること望み、それを前提に雇用関係を結び40歳が到来しても身の振り方に困惑しないように必要なスキルや経験をさせています。この事例は何も最近の「雇用の流動化」の進展を見越して、同様の環境を御社に整えるべきと言っているわけではありません。「我社は終身雇用なので、定年まで活躍して欲しい。」という考え方でも、全く問題ないと思います。

 大切なことは、経営者として会社と従業員の関係性を長期的にどう考えているかということです。例えば「会社という組織を従業員個人の『人生の修練の場』としてとらえて欲しい。この会社において自分の目的が達成できたら独立あるいは他社に転職して次にステップアップして欲しい。この会社で活躍して残した実績を我社が対価として受け取れればそれでよい。」という経営者もいると思います。

 一方で「定年まで職場を安定的に提供できることで、長期的な人生設計も可能となり従業員の安心が生まれる。安心して仕事ができることは生産性向上につながるので会社にとってプラスである。だから我社は終身雇用を前提として従業員を雇用している。」と考える経営者もいると思います。どちらの考えも賛同できます。

 2つの事例のように会社ごとに従業員との関係性の長期的展望は違いますし、違って当然と思います。冒頭申し上げた通り「雇用の流動化」が進展していくことが想定されますから、「終身雇用」を見直す会社は今後増えてくると思います。しかし一方で、前述の2例目のとおり、これからも「終身雇用」を維持したいと考える会社もあります。後者を「古臭い。時代遅れ。」と断じるのは拙速です。何故そうするのかさえ根拠をもって「終身雇用」を貫くのであれば、決して否定される筋合いのものではないと思います。

 問題は会社が決めた従業員との関係性の長期的展望を、「人材育成」の方針に反映しているか否かにあります。「当社のみならず、色んな会社を経験して自身をステップアップして欲しい。」ということがその会社の従業員との関係性の長期的展望とするのであれば、独立もしくは転職しても困らないように本人が希望する必要な業務を経験させ、有益なスキルを身に着けられるように育成プログラムを用意しておく必要があります。

 また、「定年まで当社で活躍して欲しい。」がその会社の従業員との関係性の長期的展望であると考えているのであれば、賃金に年功的要素も残さなければなりませんし、勤続年数ごとの期待する成果を「目標管理」というカタチで明示できるようにしておく必要があります。

 従業員にとって自分がこの会社と将来においてどのような関係となっていくのか、そして、今後どのように育成されるのかが分からないことほど不安のことはありません。従いまして、「この会社に在籍すると3年後はこうなっている。5年後は・・・。」という未来がある程度イメージできているように、会社側は従業員にしっかりと伝えていくことが必要であると思います。

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