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No.58話:法律は目をそらさず、正面から向き合って対策を考えましょう。

労働時間について経営者とお話をすると少なからず、「ウチのような少人数の会社では、労働基準法どおりに労働時間を管理することは不可能だ。」「時間外労働時間の上限を超えないと現場が回らない。」とおっしゃる方がいます。あるいは「残業をしてくれと頼んだ覚えはない。従業員が勝手にやっているだけだ。」「技術を覚えたいと希望する新入社員に終業時間後の機械の使用を認めている。自主学習なので業務ではない。」と労働時間であることを否定する方もいます。

コロナ前は特に飲食店では慢性的な人手不足のため、在籍する正社員を中心に長時間労働が常態化していました。ある外食企業では店長が長時間労働でうつ病を発症したと労災認定された事件が最近ありました。この会社では店長が勤務時間中の「休憩時間」を長時間取得しているので「不自然」とは感じていたものの、記録上の労働時間外労働が月44時間から54時間であり問題ありとは認識していなかったようです。しかし、実際には休憩を取っていなかったために結果的に健康に影響が生じる、月80時間を超えるような時間外労働となっていました。

会社としては休憩時間も休まず仕事をするように「上司が指示した事実はない」としていますが、記録された労働時間が「不自然」と感じた場合は実態を確認することは、厚生労働省の「労働時間の適正把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日)」において事業主に義務付けられています。従って「不自然だった」とか「上司が指示した事実はない」で片づけられる問題ではありません。

今回の事例では労働者がうつ病を発症してしまいました。健康を回復するまで病院で治療を受けなければなりませんし、長期での休業も余儀なくされ本人のキャリアも大きく棄損されます。「労災補償を受けられるからよかった。」で済まされる問題ではないということです。

仮に過労死や過労自殺で労働者がなくなる状況に至っていれば、数年前に起こった「電通事件」のように遺族に深い悲しみを与えるとともに、億単位の損害賠償が請求されることになり、会社とって取り返しのつかないことになります。事件が発生してから「こんなに長時間労働しているとは知らなかった。」と弁解しても遅いのです。

確かに労働基準法や労働安全衛生法は事業主にとって、遵守のハードルが高い厳しい法律です。また、現状の労働者の勤務実態やニーズにマッチしていない箇所もあり改善が必要と思います。しかし、これらの法律の目的は労働者の「生命と財産」を守ることにあります。

現行法に不満があってもまずは「経営に影響がないように、どうやったら遵守できるか。」を考えるべきと思います。場合によっては「事業を縮小する。」「店舗を閉鎖する。」という選択をせざるを得なくなるかもしれません。しかし、コンプライアンスに取組んでいる会社はやがて、必ず労働者から指示されると思います。そして、優秀な人材が集まり会社の発展に貢献してくれるはずです。是非勇気をもって法律と正しく向き合い、問題解決に取り組んでください。

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