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No.61話:従業員にとって「働きやすい」職場を追求しましょう。

「オフィスが狭い。」「作業場の照明が暗い。」「クーラーの効きが悪く、室内が暑い。」「工場内の換気が悪く、薬品臭が充満している。」「中2階の作業場の手すりが腐敗して今にも折れそう。」「トイレや更衣室が汚い。」など職場環境の「3K(キツイ、キタナイ、キケン)」は従業員のモチベーションを大きく損ねます。

「職場環境の改善に投資できる余剰資金が我社にはない。」という企業体力を背景とした経営者の反論はまだ理解できますが、「更衣室があるだけマシだろう。」と整備されていない他社との意味のない比較や、「俺たちの若いころはクーラーなんかなかった。もっと暑い環境で頑張っていたぞ。」と時代錯誤な根性論を熱弁されると「こりゃダメだ。」と感じてしまいます。

また、先ほどの「お金がない。」も理屈としては確かに理解できるものの、何も従業員は「事務所の移転して欲しい。」「新しい空調機を入れて欲しい。」ということが要望の本質ではないのですから、「机の配置を変えて、必要のない什器を取り除く」ことでお金をかけずにオフィスを広く、快適に改善することや、「トイレや更衣室をこまめに清掃する」ことでキレイな状態を保つことによって、その要望に応えることができると思います。

つまり、お金をかけずに少しの工夫で職場環境が快適になるように取り組んでいる会社もあれば、改善に目を背けてそのまま放置している会社もあるということです。そして、後者の会社の場合は従業員の施設の状況に反して、社長室周りがとても豪勢で綺麗に整備されていることが多いようです。

この違いは何でしょうか。残念ながら従業員の職場環境に無関心な経営者ほど、その言葉の中に「従業員を働かせてやっている。」「給料を払ってやっている。」という意識が垣間見られることです。当然、こういった意識があると、「働かせて、給料を払ってあげているのだから、これ以上何が必要なのだ。」とそれ以上のことは考えなくなります。逆に「働かせて、給料を払ってあげているのだから、もっと会社に貢献しろ。」という考えに至ってしまうようです。

一方で職場環境に関心のある経営者は、「従業員には働いてもらっている。」という意識が言葉に表れています。彼らは「従業員には働いてもらっている。だから働きやすい環境を整えておきたい。」という考えで行動します。しかも「働きやすい職場を提供すれば、従業員のモチベーションが上がって、生産性が向上する。」という下心もなく、純粋に「従業員のため」に職場環境の充実に取り組んでいると感じます。結果として、「働きやすい職場」は生産性の向上に寄与します。

そして、今後は「働きやすい職場=生産性が向上する職場」だけではないということです。「雇用の流動化」が将来において活発化し、優秀な人材を招き入れたときに職場環境が比較されることを想定しておかなければなりません。その人材が前職よりも相当劣った職場環境に接したとき、早期に転職されてしまう可能性があることを覚悟しなければなりません。それだけ職場環境は今後、重要なファクターとなり得るということです。

もちろん企業体力により「できること」と「できないこと」は出てくると思います。しかし知恵を絞れば「働きやすい職場」は企業体力の範囲内でできることは一杯あると思います。「お金がないからできない。」とあきらめずにできることから始めてみませんか。

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