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No.62話:従業員の流出を恐れて、スキルアップの教育をおろそかにしていませんか。

規模に関わらず企業において、新入社員に限らず、中堅社員、管理職などあらゆる階層を対象として、事業運営において必要な技能や知識の習得を目的とした従業員研修を実施しています。もちろん、企業体力により費用や頻度など取り組み方の違いはありますが、どの企業でも従業員研修の必要性は十分理解していると思います。

大きな企業ですと宿泊施設を有した自前の研修所を郊外に設けて、2泊3日といった合宿研修を開催しています。私も経験したことがありますが、寝食を共にして一つのテーマについて夜遅くまで同僚と議論して問題解決力を育むという研修は大変参考になり、メンバーとの交流を深めることができて有意義だったと記憶しています。そして、おそらくその研修の目的は「仲間意識の醸成」であったのだろうと思います。

この例のようにこれまでの「新卒一括採用」で「終身雇用」が当たり前の雇用関係においては、「仲間意識の醸成」は必要な従業員教育のカリキュラムのひとつだったのでしょう。また、研修対象であった技能や知識も「終身雇用」が前提であり、事業活動に大きな変化が余儀なくされる可能性もほとんど無かったので、その企業で通用する範囲に留めておいても支障はありませんでした。

しかしながら、21世紀になり「ボーダレス化」の進展やバブル崩壊以降の景気の長期低迷の影響もあって、日本企業は変化の激しい世界の市場を相手に業態の見直しを否応なく迫られるようになりました。カメラのフィルムを製造していた会社がデジタルカメラの時代の到来により、「カメラフィルムの需要は激減する。」と見越してフィルム技術を他の事業(化粧品など)に転用して生き残りにつなげていったことはご存知のことと思います。

このように企業の事業内容が大きく変化することは当然のことながら、働く従業員もこれまで培った技能や知識が通用しなくなることを意味します。業態変更後において企業に必要とされる技能や知識を習得していないと、残念ながら働く場所を失うことになります。

もちろん、他の企業で彼らの技術や知識が必要とされるのであれば、「転職」という形で働く場所を確保することは可能ですが、どこの企業も状況は同じであり、求められる職場が見つからないか幸運に見つかったとしても、前職とは比較にならない賃金で働かざるを得ないことになります。すなわち、今の職場であっても次の職場であっても新しい時代に求められる技能や知識を身につけておかなければならないということです。また、新しい技能や知識の習得は労働者の自主的な学びが基本であり、昨今いわゆる「学び直し(リカレント)」が叫ばれるようになったのはこのような事情によるものです。

一方で企業においても、従業員の自主的な学び直しを期待するだけではなく、企業自身が積極的に従業員に必要な新しい技能や知識の習得「リスキリング」を行うことで、企業内での新しい事業への労働移動を実現し、彼らの雇用の維持に取り組みを始めています。

一部には「リスキリングをして、新しい技能や知識を習得させると従業員が条件の良い他社に転職してしまい、折角の教育投資が無駄になってしまうのでは。」と危惧される経営者もいます。これはあえて否定しませんが、それでもリスキリングには取り組むべきと思います。多くの従業員はやはり慣れ親しんだ自分の企業に新しい活躍の場を望んでいるはずです。その思いを信じて彼らのために、新しい技能や知識の習得機会の提供を積極的に取り組んで欲しいと思います。

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