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No.63話:60歳超労働者の就業環境整備は喫緊の課題です。
2021.09.08
日本にとって国家レベルでの深刻な問題である「労働力不足」の処方箋として挙げられているのが、「子育て期の女性の就業促進」「外国人労働者の活用」「高年齢者の雇用継続」といわれています。特に「高年齢者の雇用継続」は定年まで培ってきた知識や技能を引き続き活用できることや、個人差はあるものの70歳を超えても意欲的に働ける人が増えてきたことから、労働力不足に最も有効と考えられています。
政府も令和3年4月から事業主に対して、これまでの「65歳までの雇用確保(義務)」に加えて、希望する労働者の「70歳までの就業確保(努力義務)」を法整備しました。もちろん「70歳までの就業確保」は「努力義務」ですから講じていなくても現時点では法違反を問われることはありません。しかしながら冒頭に申し上げた通り、65歳を超えた労働者に就業の機会を提供することは、法違反を云々することではなく今後の社会情勢から考えて必要なことです。
現在、60歳後の雇用継続は「定年再雇用制度」によって、ほとんどの企業に浸透しているものの、「再雇用後の賃金が大きく減少し、老齢年金が支給されるまでの5年間の生活水準を引き下げざるを得ない。」「役職から外れて責任もなくなったが、仕事にやりがいを感じなくなった。」「これまでの部下が上司になり、気を遣ってしまう。」といった当事者からのモチベーション低下を危惧する声が聞かれます。
また一方で、「高年齢者は新時代に必要な新しい知識や技能を持っておらず、定年再雇用後の人材の活用を持て余してしまう。」といった、高年齢者の有効活用を疑問視する意見もあります。
もちろん、全ての高年齢労働者が変化の速い社会情勢に対応した高い知識や技能を有しているとは思いませんが、それまでに会社で培った経験は貴重なものではないでしょうか。
時間的に余裕があるのであれば、今の時代に最低限必要な知識が技能を再教育で習得させてあげることは不可能ではなく、豊富な経験と合わせると大きな戦力となる筈です。
また、今の世の中でも通用する知識や技能を有している高年齢労働者もいます。彼らは当然に他の企業においても「欲しい人材」です。「雇用の流動化」でなくても定年を迎えれば彼らは「フリー」ですから、条件さえよければ「第2の人生は別の会社でも良いかも。」と他社に活躍の場を移してしまうかもしれません。
そうなれば「定年後は当然、引き続き我社で活躍してくれる。」という企業側の考えが甘い見通しになる可能性もあります。
いずれにしても、これまでのように「60歳の定年が来ました。再雇用後の条件はこのようになります。どうされますか。」というオペレーションを続けていては、早晩「高年齢労働者」という貴重な労働力を失うことになります。そうならないためにも彼らが60歳以降も意欲をもって仕事に臨めるように、知識や技能の向上に早くから取り組むことと「引き続き慣れ親しんだ自分の会社で働きたい」と思える処遇を用意してあげることが重要であると思います。
「高年齢労働者の確保」は未来の話ではありません。すでに取り組んでおかないと手遅れになりかねませんから、一刻も早く喫緊の労務課題として対応を図るようにしましょう。
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