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No.69話: 経営者の人事労務への関心度が高い会社は必ず発展します。
2021.10.20
「人材があってこそ会社は成り立ちます。我が社は従業員を大切にする会社です。」経営者がよく口にする、こういったスローガンは大変素晴らしいものだと思いますし、経営者にこのような意思がある会社は、やはりスローガンに基づいて従業員が働きやすい職場を提供できていることが多いと感じます。
しかし、立派なスローガンを掲げても経営者が感情に任せてパワハラまがいの罵声を従業員に浴びせたり、「許可していない残業を従業員が勝手にしているだけだ。」と長時間労働を抑制せずに放置したりとスローガン倒れの会社があることも事実です。この違いは一体何なのでしょう。
私は経営者の人事労務に対する「意識の違い」ではないかと思います。
多くの経営者に「人事労務を重要な経営案件であると認識していますか。」とお聞きすると、100%の方が「もちろん認識している。」と回答します。しかし、実際にコンサルタントとしてお伝えすべき人事労務リスクをお話ししようとすると、「忙しいので、その件は○○さんに説明をしておいてくれないか。」と人事担当者に振られてしまい、後日その担当者に経営者への説明をしたかの確認をすると「説明はいい。この件は君に任せるといわれました。」といった具合で、経営者の人事労務への関心の薄さを実感することもあります。
これだけで終われば良いのですが、実際に大きなリスクが顕在し多大な損失が出たときに、経営者から「なぜ私に直接、相談してくれなかったのか。」とお叱りを受けて言葉を失うこともありました。もちろん、より強力に経営者に直接伝えなかった当方に非があることは否めませんが、この期に及んで「なぜ私に直接、相談してくれなかったのか。」はもはや「逃げ口上」でしかありません。
経営者は財務や商材などの多くの経営課題を抱えているため、全ての案件に細かく対応できないことは十分理解できます。そして人事労務の課題を決して軽視していないこともわかります。しかしながら、冒頭のスローガンの例にもあるように会社は人材があってこそ、成り立つものです。いくら良い商品に恵まれて、資金繰りが良好でも「売ってくれる人」や「資金を有効に動かす人」がいなければ経営は成り立ちません。
その人たちが安心して満足に働いてもらうためには、人事労務がしっかり機能しておかなければならないのは言うまでもありません。
実務を人事担当者に、人事労務部門の運営責任を人事部長に任せることはもちろん必要ですが、彼らに100%任せきりで経営者が人事労務への関心度が低いことは絶対に避けるべきだと思います。経営者が人事労務に関心が薄いことは、従業員に必ず伝わります。そして、「この会社の経営者は我々従業員が頑張っていることや困っていることにあまり興味がなさそうだ。」と感じると、たちまち働く意欲を低下させます。すなわち、会社の業績に影響が出るのです。
経営者が人事労務を重視することとは、従業員の日々の業務に関する「頑張り」「不満」や、個人の生活での「喜び」「悩み」といったことに、深い関心を寄せていることだと思います。
人事労務に深い関心を寄せているからこそ「改善すべき」と気づいたらいち早く対応ができ、従業員からの信頼を勝ち取ることも可能になるのではないかと思います。
労使の信頼関係のその先には「会社の発展」が必ずあります。経営者が人事労務への関心を強く持つことを願ってやみません。
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