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No.76話:労働者の私生活上の不安や悩みに「関心を寄せる」ことも必要です。

労働者は会社に自らの労働力を提供し、会社はその対価を労働者に賃金として支払うのが「雇用関係」です。会社は労働者が雇用契約どおりに労働力を「誠実」に提供していれば問題はなく、雇用契約に関する以外の労働者の私生活や行動については、労働力の提供に影響がない限り立ち入る必要はありません。

労働者も終業後にどこで何をしようとも、次の始業時間までに出社して通常通りに業務に従事しているのであれば、会社に詮索される筋合いのものではないと思います。会社が必要のない私生活に関する報告を労働者に求めるとするならば、これは明らかにプライバシーの侵害になります。

しかしながら、労働者も家族の介護、子育て、病気の看護、あるいは借金などの金銭トラブルといった生活上の様々な悩みや不安を抱えています。もちろん個人の問題ですから基本的には労働者ご自身で解決すべきですが、「どこに相談すべきか。だれに相談すべきか。」がわからず、結局は解決することができずに日々悩みを抱えながら過ごしていることが多いようです。

会社は関係ないことではありますが、労働者が悩みや不安を抱えたままでいれば、日常業務で「ミスを繰り返す。」、「業務の遅れ」といった生産性の低下を招いたり、終業後に無理な副業をして体調を崩し、休業を余儀なくされることもあり得ます。また、ストレスが高まれば部下や後輩に「不寛容」となり、職場でハラスメントを起こしかねません。このような事態となれば、本人にとって不幸なことであるとともに、会社にも看過できない損害が生じてしまいます。

労働者がこのような事態に陥らないように会社としても、私生活に対して「立ち入る」とまではいかないまでも「関心を寄せる」必要があると思います。「関心を寄せる」とは、私生活での深刻な悩みや不安を抱えている労働者の情報を、上司や同僚を通じて職場から得られる体制を作っておくということです。

その情報を得ることによって会社は直接、あるいは上司や同僚を介して間接的にその労働者に「どこに相談すべきか。だれに相談すべきか。」といった助言が可能となります。場合によっては、会社の従来の制度を利用して解決に導き、彼らを悩みや不安から解放することができるかもしれません。

会社の助言やサポートを受けた労働者は、たとえ完全に悩みや不安の原因となる私生活上の課題を解消できなかったとしても、救いの手を差し伸べてくれた会社に対して大きな信頼を寄せると思います。「頼れる会社だ。」と。これは会社にとって大きな財産になるのではないでしょうか。

そのためには、まずもって「だれが悩みや不安を抱えているのか。」を知ることが大切だと思います。

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