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No.78話:労働契約上の権利は労使がお互いの立場を配慮して行使すべきです。
2021.12.22
会社は労働契約および就業規則の規定を根拠として、従業員に対して会社の仕事を行わせる「業務命令権」、部署や勤務地を変更できる「人事異動権」、会社に在籍させながら関係会社へ出向させて仕事をさせる「出向命令権」、会社の服務規律を著しく違反した行為を懲らしめるための「懲戒権」等、業務上の必要な様々な権利を有しています。
これに対して従業員は正当な理由もなく、会社からの前述の命令等を拒絶することはできません。契約上、従業委員は命令等に応じる義務があり、応じない場合は「債務不履行」となり労働契約の解除やそれによって生じた損害を賠償する責任が発生する可能性があります。このような権利は雇用契約に基づいて成り立っており、会社の秩序を維持する上でも必要であると考えられています。
しかしながら、人事異動の権利があるからといって労働者の生活環境といった個別の事情に対して配慮が欠けることがあってはなりません。例えば、老親の介護を日常において行っており、他に介護を依頼できる親族がいない場合で自分が転勤すれば介護を担うものがいない状況に従業員がある場合は配慮が必要です。従業員本人からも「転勤できない。配慮して欲しい。」と相談があったにも関わらず「転勤できないなら、辞めてもらう他ない。」という対応をすると「配慮に欠ける。」とみなされ、「権利濫用」扱いとなり民法第1条第3項により、無効とされる場合もありますから注意が必要です。
さて、
この「権利濫用」ですが労働者側も同じことが言えます。
例えば年次有給休暇です。年次有給休暇の取得は労働契約においても、労働基準法においても認められた労働者の権利です。労働者が「この日に年次有給休暇を取得したい。」と時季を指定してきた場合は、会社は応じる義務があります。
しかしながら、会社にも業務運営上の事情があり、繁忙期に入って人手が少ない上に他の従業員からも年次有給休暇の時季指定があり、正常な事業運営を行うためにはどちらかの年次有給休暇を変更してもらわなくてはならないケースもあります。このようなときに会社の年次有給休暇の時季変更を依頼されているにもかかわらず、それを無視して強引に年次有給休暇を取得すれば、やはり「権利濫用」が問われることになります。「権利濫用」が認められれば年次有給休暇と扱われず、逆に欠勤となり労働者の賃金は欠勤控除されます。
すなわち、会社も労働者も労働契約に基づいて、それぞれがそれぞれの権利を有しています。
権利を行使することは当然に尊重されるべきことですが、できればお互いに気持ちよく使っていただきたいものです。
そのためには、可能な限り相手の事情に配慮して適切に使っていただくとともに、権利行使にあたって譲れない事情がある場合でも、話し合って合意形成につなげるようにしてください。
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