『人事労務戦略』構築専門のコンサルタント 株式会社サムライズ

No.80話:従業員が勝手に判断して自由に時間外労働ができるようになっていませんか。

「仕事の結果も残せていないし、早く仕事を覚えたい。時間外に職場に残っているのは勉強であり、残業ではありません。自分の意志ですから時間外手当も必要ありません。」と、連日職場に残って自分のデスクで仕事を片付ける従業員。「一生懸命頑張っているな。自分の意志で居残って仕事をしている。時間外手当も必要ないと明確に自ら申し出ているから労務管理上は問題ない。せめて『積極性』の評価は高得点をつけておこう。」と上司も黙認しています。

一昔前であれば、以上のような理屈で「サービス残業」とよばれる「賃金不払い残業」が職場で散見されましたが、残念ながら今の世の中でこれを黙認することは非常にリスキーと言わざるを得ません。

まずもって「賃金不払い残業」は違法行為になります。現行の労働基準法に照らせば従業員の自由意志といえども発生した時間外労働に対して、使用者は賃金を支払う義務が生じます。「従業員が残業代はいらないといっているのだから、支払わなくて何が問題なのだ。」と疑問を呈する使用者もいますが、労働基準法は「強行法規」ですから当事者同士で「賃金を支払わなくてもよい。」という合意があっても、時間外労働が発生している以上、使用者から「黙示の指示があった。」と解されることから、使用者が支払い義務を逃れることはできません。

また、万が一に当該従業員が過労で倒れ、生命を落とす事態に至った場合に遺族が「会社が長時間のサービス残業を強いていたために過労死した。」と主張して損害賠償請求を起こしてくる可能性があります。従業員によっては自主的にサービス残業を申し出ていたことを家族には黙っていて、「いやー、仕事が片付かない。会社から『仕事が片付かないのは、君のせいだ。サービス残業をしてでも片付けろ。』と言われているのだ。」と話しているケースも過去の事例であります。こうなってしまうと「従業員からの申出で残業代の支払い無しで残って仕事をしていた。会社に責任はない。」ではきっと遺族には理解してもらえないと思います。

以上のようなリスクがあるからではありませんが、時間当たりの労働生産性を向上する上でも時間外労働時間を減らして、与えられた勤務時間内に仕事を完了させることが重要です。それでも物理的に時間内に仕事が完了できない場合は人員が不足しているということになります。わずかな時間外労働で処理できる場合は正々堂々と従業員に命じればいいのです。しかし、圧倒的に時間数が足りないのであれば、人員を補充するか勇気をもって業務量を調整すべく受注を減らすかの選択をすべきです。

いずれにしましても、時間外労働は使用者が命じて「させる。」ものであり、従業員の判断で行うものではありません。冒頭のような従業員からの「自分の意志での時間外手当の必要ない居残りです。」と申し出があっても、会社の指示によるものでなければ、きっぱりと禁じてください。「キミの気持ちや、仕事に対する責任感は認めるが、キミの申出は会社として認められない。終業時間までに仕事を終わらせて職場を退出してくれ。それでも職場に滞留した場合は業務命令違反を問うので注意をして欲しい。」と明確に伝えてください。

そこまでの対応を会社が行ってもなお、居残って仕事をしている場合は当然、懲戒処分の対象となりますし、時間外労働として賃金を支払う必要はありません。あいまいな対応はせず毅然として従業員に接するようにしてください。

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