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No.83話:従業員を処遇する判断基準が必要な理由とは。

経営者として雇用している従業員の「給与の見直し、賞与支給のための評価」「上位職への昇格・昇級」の処遇、あるいはやむを得ず「懲戒」「解雇」といった処分を判断する場面があり、避けることのできない仕事のひとつですね。しかも、その判断は一人の従業員の社会生活に大きな影響を与えますから責任は重大です。

処遇や処分の内容によっては従業員が納得せず、訴訟や労働審判といった労使紛争に至ることもあります。そこで、これらの処遇や処分の納得性を向上させるために経営者は、事前に就業規則や人事制度などのルールに定めた判断基準によって決定しています。

例えば処遇における「上位職への昇格・昇級」については、資格等級、職位ごとに定めている「職務遂行能力」や「必要な前階級での在級年数」、あるいは「必要な公的もしくは社内資格の有無」等の判断基準に達しているか否かで決定することになります。

一方、従業員は自身の「上位職への昇格・昇級」が期待通りとならず不満を感じた場合は、会社に異議を申し立てることになります。しかし、前述のような判断基準に基づいた決定であるとの説明を受けると理解納得することが多く、労使紛争に至る可能性は低くなります。判断基準に基づいた処遇の決定であれば、万が一、労使紛争に至ったとしても会社側の主張が指示される可能性が高くなると考えられるからです。

このように一般には処遇について労使紛争が起こることはあまり見かけませんが、「懲戒」や「解雇」といった処分については、ご存知の通り労使紛争に至るケースが多いです。そして、残念ながら会社側の判断が「不当である」とみなされる場合が多いようです。それはひとえに会社の判断基準に基づいていないからだと考えられます。

実は判断基準さえも就業規則に定めていない会社もあり、処分が「根拠不明」とみなされ司法等において「不当である」と当然判断される可能性が極めて高くなります。従いまして、まずは処分の根拠となる判断基準を就業規則等に整備することが絶対条件になります。

次に重要なことは判断基準の運用が「一貫している」ことです。例えば、同様の「懲戒」対象となる行為を行っている従業員AとBがいて、Aのときは「出勤停止」処分をしたのに対して、Bのときは「譴責」処分に留めた場合です。これは明らかに処分の一貫性に欠けており、当然Aが自身の処分に不満に感じることになります。

同時に複数の従業員を処分する場合はこのような相違は生じませんが、処分の時期にタイムラグがあると人事担当者が変わっているなどの理由により、処分の一貫性が守られていないことがあります。処分のダブルスタンダードは従業員の不満の温床になりますから極力回避すべきです。

そこで処分の一貫性を保持するために「処分の記録」が必要になります。これは単に誰をどの処分にしたという結果だけの記録ではなく、「どういう行為をして、会社や職場にどのような影響を及ぼし、本人に反省がどの程度見られ、どのような情状があり、結果としてどのような処分を決定した。」等を詳細に残しておくことをお勧めします。

もちろん、将来において全く同じような処分事案が発生することはあり得ませんが、類似の事案は今後も起こりえるかもしれません。そのときにこのような記録も別の意味での処分の判断基準となるからです。

いずれにしても、紛争が生じたときに第三者が見ても「客観的に合理的な理由を有し、社会通念上相当である。」と認める処遇、処分となるように、判断基準を会社のルール等において整備することに留意しましょう。

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