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No.85話:人事労務の問題を「先送り」することの弊害とは。

「状況があまりにも複雑すぎて、無理に解決を図ろうとすると更に事態が悪化してしまう。」あるいは「今の科学技術では対応不可能であるが、近い将来にこの分野での技術革新が期待できる。」といった場合に目の前にある課題を「先送り」することがあります。このような場合は将来に問題解決の見込みがあり、「先送り」の選択が解決につながるという根拠があって行われていると思います。

一方で、どこかの国の政治家のように問題の難易度が高すぎて自分が責任者のときに解決に取り組むことで相当な負担が生じ、かつ批判や抵抗が大きすぎて自分にとってのデメリットが大きいと判断して、問題を次世代に「先送り」しているケースがあります。あるいは数世代にわたり「先送り」されてきたもので、「先送り」することが常態化しているといったケースもあります。これらは前述のケースと異なり「先送り」することに明確な根拠がありません。単に自身の「責任回避」のために「先送り」しているにすぎません。

このような責任者の「責任回避」のための「先送り」により当然、不利益を被る人がいます。例えば隣町のアクセスが良くなる道路の新設を住民から要望されているにもかかわらず、用地買収や該当地区の住民の説得が大変だからと着手せずにいるため、長年にわたり多くの住民が迂回して隣町に異動せざるを得ない状況が続くという場合です。この状態において住民は金銭的な不利益を実感することはなく、大きな声を上げて不満を口にすることはありません。しかし、「不便である」という不利益を被っていることは事実です。

では「先送り」が会社の人事労務に関する問題であればいかがでしょうか。例えば職場の責任者から「大きな成果を残して頑張っている若い従業員に、報いるような賃金を上げられるように制度を改定して欲しい。このままではもっと条件の良い会社に転職してしまいかねない。」との要望が数年前から上がっていたにもかかわらず、「ベテラン従業員の高い賃金を見直さざるを得ず、彼らの理解を得るのはかなりハードルが高い。」と制度改定に二の足を踏んでいればどうなるでしょうか。職場の責任者が危惧していたように若い従業員が「この会社にいても賃金が上がるのは期待できない。ちょうど条件の良い会社から転職の誘いがあったのでそちらでお世話になります。」と退職されてしまうことも十分あり得ます。

あるいは「酷いパワハラをする上司がいる。止めるように指導して欲しい。」と職場の従業員から相談があり、事実認定しているにもかかわらず、会社に大きな影響力のあるその上司に「忖度」し何のアクションも起こしていない状況が続いていればどうなるでしょうか。万が一その上司がある日、遂に従業員に暴行を加えて傷害事件に及べば、責任は加害者である上司だけではすみません。事態を知りながら長年放置していた会社の責任は極めて重いと判断されることになります。

「臭い物に蓋をする」ではありませんが、人事労務の問題は「先送り」しても問題解決になりません。むしろ問題を悪化させ、深刻化させます。その弊害は従業員はもちろんのこと、会社が被ることになります。「代々『先送り』されてきたもので、自分に責任はない。なぜ自分が苦労をしょい込んで解決しなければならないのか。」と思うのではなく、「自分が担当しているときに解決してやるぞ。」と気持ちを切り替えて、勇気をもって取り組んで欲しいと思います。

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