『人事労務戦略』構築専門のコンサルタント 株式会社サムライズ

0798-36-7188

無料メルマガ登録

今週のコラム、各種ご案内をお届け中です。ぜひ、ご登録ください。

登録解除

No.88話:「逃げるは恥だが役に立つ。」が意味することとは。

仕事柄、都道府県労働局が公表する書類送検となった労災案件を目にします。安全帯の未装備や足場を設置せずにスレート屋根を修理中に踏み外したことによる作業員の転落死、ヘルメットを装着せずにフォークリフトを操作中に、落下した荷物が頭部に当たって作業員が亡くなった事案など、どれも法律にもとづいて安全策を講じていれば防げていた事故です。

いずれの事件も事業主が労働安全衛生法違反として起訴され、刑事罰を受けることになります。そして何よりも失われた命は帰ってくることはなく、遺族に深い悲しみを与えることになります。当然のことながら、遺族からは不法行為、債務不履行(安全配慮義務違反)、もしくは使用者責任を根拠に損害賠償請求を事業主が受けることになります。

事業主としては法違反であることは認識していたものの、作業の効率向上などの観点から「この程度の事なら問題ないだろう。」と見過ごしてしまったことで招いた事故に変わりはありません。当然のことですが、事業主が言い逃れることはできません。上記の事案は作業現場で起こった事例ですが「この程度なら大丈夫だろう。」という、ちょっとした気の緩みによる不幸な労災事故はデスクワークでも起こり得ます。

例えば長時間労働です。近年の労働力不足により通常でも要員配置に苦慮しているところに今回のコロナ禍です。従業員本人のコロナ罹患、もしくは濃厚接触者となったこと等で急に欠勤者が増えたため、勤務できる従業員に負担が集中せざるを得なくなりました。

結果として、彼らに通常以上の時間外労働をお願いする事態が生じている事業所が増えています。メルマガでもお話ししましたが時間外時間が36協定で定める上限以内であればまだしも、これを超えることは法違反となり許されることではありません。ましてや従業員の身体に危険を及ぼす時間数を強いることは、使用者に課せられた「安全配慮義務」を怠っていることになります。「現状の要因では超過労働の発生はどうしようもない。」は現実を目の前にした経営者の悲痛な叫びだと思います。しかし、従業員が倒れたときには更に悲痛な叫びをあげざるを得なくなります。

「会社の実情もわからない部外者は、あるべき論を言い立てるだけでいいが経営者はそんなことは言っていられないのだ。」と、お叱りを受けるのは覚悟の上で部外者だからこそ申し上げます。「従業員の生命財産を預かっているという強い自覚はありますか。」と。

「万が一」の事態に至れば、経営者として会社経営の全てが終わってしまいかねません。そして、従業員の遺族は悲しみと困窮の淵に追いやられます。労使双方にとって不幸でしかありません。「コロナで人が足りない。過重労働は致し方ない。」は逃げ口上です。時には「退く」ことも「逃げる」ことも選択としてあるべきです。経営者として勇気ある決断を望みます。

コラム一覧

無料メルマガ登録

今週のコラム、各種ご案内をお届け中です。ぜひ、ご登録ください。

登録解除