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No.98話:「同一労働同一賃金」の意味するところとは。

安倍政権が推進した「働き方改革」の取り組みのひとつに「同一労働同一賃金」があります。大企業では2020年4月1日から、中小企業では2021年4月1日から施行され、すでに2年(中小企業は1年)を経過していますが、対応の進捗は企業の事情により様々で概ね大企業はすすんでおり、中小企業は「まだ手付かず。」というところも多いようです。

さて、対応途上の中小企業の担当者から良く伺うのが「非正規労働者の賃金も正規労働者と一緒にしなければならないのか。」というものです。この質問は「同一労働同一賃金」の制度を正しく理解していないことを端的に物語っていると思います。

「同一労働同一賃金」はまさしく「読んで字のごとく」で、非正規労働者であっても正規労働者と比べて、「同じ仕事をしているのであれば、同じ賃金を支払うべき。」というものであり、非正規労働者に対して「不合理な待遇差」を禁じています。その「同じ仕事」であるか否かを「職務の内容」「職務の内容・配置の変更範囲」「その他の事情」で照らし合わせて判断することになり、「同じ」であるにも関わらず賃金などの「待遇」が「違う」のであれば、改正することが法律の趣旨に則ることになります。

一方で非正規労働者の「職務の内容」「職務の内容・配置の変更範囲」「その他の事情」が正規労働者のそれと「違う」のであれば、同じ「待遇」とする必要はなく「違っていても良い」ということになります。

しかしながら、その「待遇」の差が「不合理」であることは当然許されません。実はこのことが「同一労働同一賃金」の重要ポイントでもあります。前述の担当者のように正規労働者と非正規労働者の「待遇」を全く「同じ」にする必要はありませんが、「待遇」に「差」を設けるのであれば、その根拠を明確にする必要があるということです。

そのためには「待遇」の各項目について詳細にその目的や金額等の条件の意味合いを整理しておく必要があります。例えば「住宅手当」について正規労働者に支給されて、非正規労働者に支給されないのであれば、「非正規労働者にはない転居を伴う転勤が正規労働者にはあり、転居に伴う家財道具等への負担への配慮として○○の金額を支給する。」といったものになります。

別の視点では「通勤交通費」は正規、非正規に関係なく通勤の費用は平等に負担が生じますから、「正規労働者は上限なし」とする一方で「非正規労働者は月当たり1万円まで」とすると「不合理」と判断されますので改善が必要です。

以上のように「待遇差」の検証を行うと「不合理」な状態にあるものが確認できるかもしれません。そして「不合理な待遇差」を認識できたものの企業体力的にはすぐに解消できない場合もあり得ます。「不合理である」と認識し、解消を求める訴えを起こすのはあくまでも労働者側にありますから、その「待遇差」をどのようにして今後に改善していくのかのプランを設計し、該当する労働者に説明をして理解を得ることが必要ですね。

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