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No.99話:賃金不払い残業のトラブルによる会社の損失はどの程度になるか。
2022.05.18
看過できない労務問題のひとつに「賃金不払い残業」というものがあります。残業をしているのに残業手当が支払われないというものです。これは明確な労働基準法違反ですから労働者が労働基準監督署に違法状態を「申告」すれば、使用者は「不払い」の残業手当の支払いを命じられることになります。
人件費の負担が大きな会社では「そんなことは解っているが如何ともしがたい。」ということなのですが、では実際に支払いが命じられれば具体的にどの程度の金額になると思いますか。
例えば月例賃金が25万円の労働者が毎月20時間分の残業手当が支払われていない場合はどうなるでしょう。仮に月の平均所定労働時間が173時間とした場合、時間割賃金は1,445円であり2割5分の割増を付加すると1,806円が1時間当たりの残業手当となります。毎月20時間分が未払いですからひと月36,127円となります。
2020年の法改正により賃金請求の時効が2年から3年(本来は5年)となりましたら、過去から「賃金不払い残業」が常態化しているのであれば、丸々3年分の約130万円 の支払いが必要になります。さらに同様の労働者が4人いれば520万円になりますから結構な金額です。
万が一、労働基準監督署に「申告」せずに、いきなり民事裁判で労働者が請求した場合はどうなるでしょう。先ほどの130万円だけでなく裁判所が決定すれば労働基準法第114条に定める「付加金」の支払いが命じられる可能性があります。「付加金」は最大支払うべき「未払金」の「同一額」ですから260万円ということになり財務体力の脆弱な会社であれば、本当に破綻しかねないような深刻な金額です。
「労働者が自分の会社がつぶれるような請求はしてこないだろう。」と思うかもしれませんが、退職するつもりの労働者であれば去っていく会社がどうなるかはあまり感心がありません。
状況次第で労働者は会社の事情などお構いなしで未払いの残業代を請求してきます。
「会社が大変な時期なので労働者も理解して、1日1時間程度のサービス残業に協力してくれている。ありがたいことだ。」という考え方は、会社にとって都合のよい解釈でしかないと認識するべきです。また「費用がかかる。」「煩わしい。」と労務管理を疎かにすれば、とんでもないしっぺ返しをうけることになりかねません。わずかな残業時間であっても労働者にとっては負担が生じているのですから、会社は緊張感をもって労務管理をすべきです。
労務管理の環境整備には確かに費用が生じますが、将来生じるかもしれない労務トラブルによる損害を想定すると、目には見えないベネフィットがある
と考えて、この機会にご検討をお願いします。
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