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No.103話:心身ともに健康な労働者がいる会社の方が事業運営において圧倒的に優位である理由は。

太平洋戦争の末期、太平洋に浮かぶ硫黄島で日米両軍による大激戦が行われました。いわゆる「硫黄島の戦い」です。この戦いでアメリカ海兵隊は多大な犠牲を払いつつも日本軍が守備する硫黄島を攻略することができました。一方、火山島である硫黄島にわずかな水と食料で立てこもった日本軍は、補給もない状態で奮戦し何度も米軍を押し戻しましたが結局は圧倒的な兵力の差により、ほとんど全滅状態で敗北することになります。

後年、生き残った元日本兵の方の手記が発刊されましたが、その中で「アメリカ兵は時間が来ると新しい兵隊が海上の艦船からやってきて、硫黄島で戦闘中の兵と交代する。交代した兵隊は艦船に戻り休息を取る。一方で日本軍は補給もなく休息もない状態で戦わねばならず。これでは戦争に勝てるわけがないと思っていた。」との体験談があり、とても印象に残りました。

私がこの体験談を読んだときに感じことは、いわゆる「根性」とか「情熱」などといった人間の感情は大切だけれども、それだけで目的を達成するには限界があるということです。確かに一時的な緊急事態であれば「火事場のバカ力」なるもので乗り越えることも可能ですが、長期間におよぶような事態ではいずれは気持ちも擦り切れてしまい、上手くいかなくなります。

戦争遂行と事業運営も同じものだと思います。会社の事業目標達成のために使用者からの指示のもと、労働者は与えられた業務を遂行していきます。しかし、人員が不足しているからという理由で「時間外労働が多い。」「休みが少ない。」「食事休憩も満足にとれない。」ような状態や、経費を節減するからといって「エアコンの使用が抑制されている。」「職場が狭い。」「コピー機の使用も制限されている。」といった環境では、使用者から「良いパフォーマンスを発揮してくれ。」と言われても、労働者にとっては「それは無理ですよ。」と言いたくなるはずです。

また、このような状態で働く環境が整えられているライバル会社と事業上で競争しても、結果は目に見えていると思います。確かに「従業員の皆さんのなお一層の頑張りに期待したい。」「物量ではA社に劣っていても、精神面では我社が上回っているから大丈夫だ。」などと言われると労働者も「よし、頑張ろう」と一時は感じるかもしれませんが、いずれは限界を迎えることになります。

労働者の「熱い気持ち」を喚起することは確かに大切であり軽視すべきではありませんが、それのみをもって事業の持続的な発展につなげていくことは極めて困難だと思います。働くのは生身の人間である労働者です。労働者の高いパフォーマンスを導くためにも、心身ともに健康な状態で長期的に働きつづける環境を、論理的な根拠をもって提供することは使用者の責務であり、人事労務の根幹であることをどうぞお忘れなく。

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