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No.109話:労働者が個別に労働条件の見直しを要求することを想定していますか。

一般に従業員の賃金改定は、賃金制度が未整備の会社であれば社長が「来期はこの金額にします。頑張ってください。」と一年間の成績を背景に個別に提示する、いわゆる「鉛筆ナメナメ」方式で行っているのではないでしょうか。また、賃金制度があり人事評価制度と連動しているのであれば、一年間の成績を考課表に照らして決定された評点により、「B評価だったので、規定により次年度は○○円昇級です。」と会社から明示されるという方式だと思います。

すなわち、「経営者の判断」、もしくは「賃金制度・評価制度」と、あくまでも「会社の事情」により賃金をはじめとする労働条件が決定されていると思います。「賃金制度・評価制度」は労働組合もしくは労働者の代表との協議で見直しがおこなわれる会社もあるので、「一方的な会社による決定ではない。」というご意見もあります。しかし、これにしても一旦労使協議で決定した事項は全従業員が適用されることになり、個別の労働者の個別の労働条件への「要求」による決定ということにはなりません。

現状においてはこれらの方式は合理的であり、大きな混乱がなく当面は継続されると思います。しかしながら、昨今の社会環境の激変により、労働者の労働に対する価値観の変化、そしてライフスタイルの変容による短時間労働、副業・兼業、フリーランスといった「働き方の変容」が進展しています。この状況が加速すると現状のような会社からの画一的な労働条件の提示、そして合意決定という方式を続けることは難しくなると思います。

例えば、前年度に新しいサービスを企画し市場に展開したところ、創業以来記録したことのない利益を会社にもたらした従業員に、現状の賃金制度に基づく最高の評点をつけて昇給し、かつ役員以上の賞与を支給したところ本人から「ご冗談でしょう?他社からこの3倍の報酬を提示されているので、そちらに転職しますがいいですか。ご再考できないですか。」といわれた場合にどう対応しますか。「会社の規定で考え得る対応なんだ。君だけ特別扱いはできないよ。」と回答しますか。

あるいはレアなスキルをもった大変優秀な従業員から、「地方にいる一人暮らしの母親の具合が悪く、面倒を見たいので故郷に転居します。しかし、仕事を続けたいので週3日勤務、勤務時間の拘束のないテレワーク、しかも賃金はそのままを希望したいのですが雇用継続していただけますか。」と要望があった場合に、「他の従業員からも以前同じ要望はあったが、そのような対応をしていない。今後もその方針だ。」と拒絶しますか。

いずれのケースも、その回答であれば恐らくあなたの会社はその人材を失うことになります。彼らは自分のスキルに対する市場価値を認識していますから、自分の要望が受け入れられない場合は「特別扱い」してくれる企業に転職を選択すると思います。

画一的なスキルや経験を有しただけの従業員であれば、この後も現状の賃金制度・評価制度を継続しても流出することはないと思いますが、会社の事業に大きな影響を及ぼす高スキルの従業員には今後、一般的な従業員と同じ制度を続けていると流出は避けられないかもしれません。そうならないためにも、彼らからの労働条件の提示も想定した制度をそろそろ考えるべきではないでしょうか。

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