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No.111話:がん治療中の従業員の就業にあたって気をつけておくこととは。
2022.08.10
医学におけるがん治療技術は21世紀に入って驚異的に進歩しています。がんの種類にもよりますが、一昔前であれば切除手術で2,3カ月の入院を要していたものが、最近は開腹手術をしなければ1週間から10日で退院も可能となっています。
また、手術後の患者の生存率も格段に向上しています。早期発見、早期治療であればがんは「恐ろしい病気」ではなくなっています。実際にみなさんの周りにも「数年前にがんと診断されたが、早期発見で治療できたので、今は職場で元気に働いている。」という人もいるのではないでしょうか。
しかしながら一方でがん治療には手術後も、しばらくは抗がん剤の投与や放射線治療を必要とする方もいます。これは患者にとっては体に大きな負担となり特に抗がん剤は投与されると数日は食欲がなくなり、体も動かせなくなります。
さて問題はあなたの会社に以上のように図らずもがんを患い、
手術後に無事に職場復帰を果たしたものの、仕事をしつつも当面は引き続いて抗がん剤の投与や放射線など治療を受けざるを得ない従業員がいた場合にどのように対応すべきかということです。
まずもって、昔のように「がんになって手術をしたようだが、もう以前のように会社に貢献してもらえないはずだ。できれば会社に復職せずにそのまま退職してもらいたい。」という考え方は捨て去ってください。(もう、いないと思いますが。)がんを患ったからといって、その従業員は職場復帰しても従前のように成果を生み出す可能性は極めて高いのです。従って単に「がんを患った」だけでは雇用関係を解消する理由にはなりません。
私もがんの治療をしながら継続して働いている方のお話をお聞きしたことがありますが、闘病している人にとって「働く」ということは生きる上での大きなパワーになり、病気に打ち勝つエネルギーになるそうです。ですから働ける状態になった従業員が「働きたい」と希望するのであれば、会社としてはできるだけ手を差し伸べるようにしてあげて下さい。
労務管理上のポイントは職場復帰後において基本的には通常通り勤務可能ではあるものの、
しばらくは治療が続くため、抗がん剤等の影響で一時的に勤務が不安定になったり、仕事のパフォーマンスが落ちたりと勤務成績に「波」がでてしまうことに会社がどう向き合うかということです。
その向き合い方を判断するうえで大切なことが「波」をしっかりと把握することだと思います。「波」の「頻度」や「大きさ」そして「期間」は従業員一人一人の症状によって違いと思いますが、従業員本人との面談や場合によっては主治医との面談によって十分把握することは可能です。
「波」の状況がある程度把握できれば、その「波」をあなたの会社が企業体力的に受け止めることが可能かを判断できると思います。
その結果、「対応が難しい。」と判断せざるを得ない場合もあるかもしれません。同じ「波」でも会社の規模や業務内容によっては「対応できる」場合もあれば、「対応できない」場合もあるのですから当然判断が異なると思います。どうしても「対応できない」場合はその従業員と話し合って、継続して働ける職場を紹介するなどできる限りのことをしてあげて下さい。
病気の発症はだれでも起こり得ます。「自分が万が一、同じ境遇となったら」を考えて支援を考えてあげましょう。
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