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No.113話:「懲戒規程」を設定する本当の目的とは。

ほとんどの会社の就業規則には「懲戒規程」というものがあると思います。会社の事業の正常な運営を保持するために、ルールを守らない従業員に一定の「制裁を加える」ために設定します。

さて、この「制裁を加える」ことについては、過去において「指揮命令下にある従業員とはいえ私的な組織である会社が、一個人に対して組織内で行うことについては許されないのではないか。」という議論が法定などを通じて行われました。その結果、会社の「秩序維持」のためには、事業運営を妨げる行為をする従業員に「制裁を加える」、すなわち「懲戒権」を行使することはやむを得ないと判断されるようになりました。

ただし条件があり、就業規則に「懲戒規程」を設定し従業員に弁明の機会を与えるなど、規定に基づいた制裁処分を行う場合に限られます。また、ひと口に「会社の秩序を乱す。」といっても、些細なミス程度で重い制裁処分とすることは相当性を欠きますので、事案の中身に応じた処分が求められます。万が一、これらの条件を満たしておらず従業員と法廷闘争に至った場合は、会社の「懲戒権」の行使が「権利濫用」とされ「無効」とされる可能性が高くなります。すなわち、「制裁を加える」ことは、そんなに簡単ではないということです。

「そんなハードルの高い『懲戒規程』に何の意味があるのか。」とのご意見をいただくこともありますが、「懲戒規程」の目的をもう一度考えていただきたいと思います。「懲戒規程」の目的は会社の労務管理上の「秩序維持」です。「仕事をする上で会社が従業員のみなさんに求めるルールは就業規則の『服務規律』のとおりです。何度もルール違反をする、あるいは故意や重大な過失により違反をすると『懲戒規程』に基づいて、『減給』や『出勤停止』といった制裁を加えますよ。悪質な違反の場合は『解雇』もあり得ますよ。だから、ルールを守って仕事をしてくださいね。」というメッセージでもあります。

にもかかわらず、残念ながら人事担当者の中には、注意して改善するように指導すれば足りるような軽微な違反事案でも、重い制裁を課そうとする方もいます。あるいは重い制裁が求められるような重大な違反事案であっても、「穏便に済ませたい」という理由で軽い処分で済ませようとする会社もあります。いずれも会社の「秩序維持」という「懲戒規程」の目的を理解しておらず、かえって従業員に「この会社はこの程度のミスでも処分される。」あるいは「こんな重大な違反行為をしても、この会社では重い処分はされないのだ。」と謝ったメッセージを伝えることとなり、結果として「秩序の混乱」を招くことになりかねません。

大切なことは「懲戒規程」は「制裁を加える」ありきではなく、この規程を設定する本来の目的を正しく理解して、正しく運用することです。くれぐれも従業員がルールを守って安心して働くことができる環境を作ることにつながらなくては意味がないことをお忘れなく。

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