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No.115話:人事労務知識に豊富な経験が必要な理由とは。
2022.09.07
事業規模が大きい会社では、生産部門、販売部門、企画部門、総務部門などに組織構成をして運営していると思います。その上で経営者は各部門に従業員を配置して、事業活動を委ねています。
欧米などでは各部門の職務に経験がある人材や、専門性を有している人材を募集して雇用するいわゆる「ジョブ型」方式が多くの企業で採られていますが、日本では一般に職務を特定しないで人材を学校卒業後に一括して採用する「総合職型」とか、「メンバーシップ型」と呼ばれる方式で採用が行われています。
従業員の職務を限定しない「メンバーシップ型」雇用の国内企業では、「部門の人員要請」や「組織の活性化」、あるいは「人材の育成」などを目的とした「ジョブローテーション」が行われています。この制度により従業員は様々な職務を同一企業の中で経験することになり、企業サイドは「ジョブローテーション」を通じて、従業員の適性を見極めることができます。そして、必要に応じて能力を最大限に生かせる職務に人材を配置し、組織の生産性を高めるようにしています。
しかしながら、この「ジョブローテーション」を厳格に運用すると、5年程度で違う職務に変わるため、専門的な能力や知識を必要とする職務では「期間が短い」ということになります。とりわけ「高度な専門的能力、知識が求められる職務」には人材が育たないというデメリットとなります。
「高度な専門的能力、知識が求められる職務」とは、技術職や企画職などがイメージされますが、人事職も該当すると私は思います。
人事労務に関する知識は「労働基準法についての知識があれば十分だろう」という考え方もありますが、単に労働基準法に限らず労働安全衛生法、労働契約法、労働者派遣法、パートタイム・有期契約労働法といった周辺の法律や、労務トラブルに関する裁判例についての知識も必要となります。
「高度な法律に関する知識は、弁護士や社会保険労務士といった専門家にその都度問い合わせればいいではないか。」というご意見はもっともですが、人事担当者に基本的な知識が無ければ専門家にそもそも「何を聞いたらいいかさえ分からない。」といったことが起こり得ます。そして最悪は「事態が深刻化してから相談してくる。」ことになりかねず、これでは専門家として有効な手立てを助言することが困難になります。
人事部門は会社組織を運営するための「扇の要」です。人事部門がしっかりと機能するためにも豊富な知識と経験をもった人事担当者の配置が重要です。
もちろんのこと、「ジョブ型」採用で「高度な専門的能力、知識」を有した人材を雇用することもありですが、まずもって「ジョブローテーション」で社内に適正な人材を見つけたら、早期に人事部門に配置して職務を経験させて、その経験を通じて実のある知識を習得させることです。そして、人事担当者として「高度な専門的能力、知識」を身に着けたら、「ジョブローテーション」の対象外とし、永く人事労務職務に従事させることが必要と思います。
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