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No.117話:「退職されるよりはマシ」と遅刻欠勤を多めに見ることは極めて危険です。
2022.09.21
「『朝寝坊していた。』など、正当な理由もなく遅刻を繰り返す従業員がいて困っています。」あるいは「連絡もなく平気で欠勤を繰り返す従業員がいるがどうすればいいでしょうか。」というご相談を頂くことがありますが、正直これは「困る」以前の問題です。
労働者は雇用契約に基づき「完全な状態」で労務を提供する義務があります。すなわち「定時に出勤してこない。」、あるいは「労働すべき日に無断欠勤する。」ことは、この「完全な状態」で労務提供をしていないことになり契約違反です。また、彼らは就業規則の服務規律における、いわゆる「出勤不良者」に当たり懲戒対象者でもあります。
使用者は当然、このような従業員に対してまずもって注意指導することを通じて、雇用契約上において履行義務のある「完全な状態」での労務提供をすることを求めることができます。
しかし、実際には「注意しても遅刻や無断欠勤を繰り返し改善しない。かといって、あまり強く指導することで辞めてもらっても困る。」という理由で、改善されないまま放置している事業所もあります。これは労務管理としては極めて不適切です。
確かに目の前の「人手不足」という現実から「退職されるくらいなら、少しくらいの遅刻、欠勤は多めに見よう。」と考えたくなるお気持ちはよくわかります。しかし、一方では「出勤不良」従業員にとっては、「この会社は遅刻や無断欠勤をしても解雇されない。」と会社の労務管理を軽視するようになります。そして、遅刻、欠勤を繰り返すことはもちろん、仕事を怠けることや上司の指導も受け流すような勤務態度を助長することになりかねません。さらには図々しくも無断欠勤をしておいて、次の日に当然のごとく「昨日の欠勤を年次有給休暇に充てて下さい。」と言い出す従業員が現れる事例もあります。ここに至ればすでに「会社がなめられている。」といっても過言ではありません。
また、会社のルールを守って真面目に働いている従業員にとって、「ルールを守っても守らなくても同じだ。自分も彼らと同じように遅刻、欠勤をさせてもらおう。」といった誤ったメッセージを送ることになり、「出勤不良者」を拡大することになります。このような事態になれば、その会社の労務管理はすでに「崩壊」しているのと同じです。
では、そうならないためにどのように対処すべきでしょうか。それは出退勤時刻を厳格に守らせ、無断や理由のない欠勤を認めないといったことを徹底することです。これらは就業規則の服務規律に必ず記載しているはずですから、
再度の注意指導をしても改善されないのであれば、就業規則に則って躊躇なく雇用契約を解除する方が良いと思います。
「出勤不良を理由にして解雇することは厳しいのではないか。」とお考えの方がいますが、前回のコラムでも申し上げた通り間違いや失敗が多い従業員や、ノルマ未達成者よりも「出勤不良者」の方が相当悪質です。注意しても遅刻、欠勤を2度3度繰り返す、反省した様子がうかがえない場合は、毅然とした態度で臨むべきです。「正常な出勤」を求めることは労務管理の基本中の基本です。絶対にそのことを忘れないようにしてください。
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