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No.127話:ハイスキルの人材にはそれなりの費用も必要という視点をもつこと。

先日、ある会合で代表者の方が「人件費は会社にとっては費用ではあるけれど、将来への『投資』でもある。良いリターンを得るためにも人材への『投資』を惜しむべきではない。」と話ししていました。確かに従業員へ費用を投じることは大切ですが、本当に投じただけのリターンが企業側に期待できるのでしょうか。残念ながらこれからの雇用システムではその確立は非常に低いと思います。それ故に私個人としては「投資」というこの言葉には大きな違和感を覚えました。

会社は事業を運営するにあたり、賃金を支払って必要な人数の労働者を雇うことになります。会社は利益を残しつつ事業を継続しなければなりませんから、過剰な費用負担はできません。労働者に支払う賃金や社会保険料といった人件費も当然、利益を損なわないように設定されています。

もちろん人件費とはいえ労働者にとっては「生活の糧」である賃金なのですから、物品のように安易に上げ下げできるものではありません。しかし「投資」という視点で労働者の指導育成に必要以上に費用を投じることはいかがかと思います。かつてのような「終身雇用」の状況であれば、指導教育に大きな資金を充てても将来の会社への貢献が期待されることから「投資」という言葉には意味があると言えましたが、「終身雇用」がほとんどの企業で崩壊しつつある現在ではいかがなものでしょうか。

大きな費用を投じて育成した人材に転職されてはとても「投資」とは言えないと思います。「投資」というからには一定以上のリターンが期待できなければ意味がないのではないでしょうか。従業員への指導育成に費用を投じるなというつもりはありませんが、「投資」という視点を持つ時代ではないということです。

今後はますます「雇用の流動化」は進展し、「ジョブ型」と言われる雇用形態のウエイトが高くなってきます。労働者にとって就職先の会社は自身の労働力やスキルを提供する対象でしかなくなりつつあります。提供したものに見合うリターン(賃金や労働環境、経験など)が無い、あるいは別により条件のよい企業が見つかれば労働者は極めてドライですが、「見切り」をつけて転職していきます。

これは会社側も同様です。「労働者に投じる資金は費用でしかない」という視点を会社側も持つことです。ハイスペックの機械を導入しようと思えば、当然費用も高額になるのと同じで、ハイスキルの人材は賃金も高くなるということです。当然のことながら費用である以上は定めた期間内での効果を想定しておき、期待通りの結果が得られなければ会社側から労働者を「見切る」こともあり得るということです。「労働者を大切にする」ことは経営者の心構えとして持っておくべきと思いますが、同時に「人件費という費用でもある」という視点を持つこともお忘れなく。

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