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No.135話:「解雇規制の緩和」を誤解していませんか。

「日本はもうすぐ欧米のように従業員を解雇しやすくなるのでしょう?」といったご質問をいただくことがあります。思わず「またか。」とつぶやいてしまいそうになりますが、この手の質問の答えは「日本に限らず欧米でも解雇は安易にできませんし、今後も変わりませんよ。」となります。

このような質問や問い合わせが出てくる背景は、現状で政府において協議が続けられている「解雇無効時の金銭救済制度」という案件があるからです。細かな制度案の内容は紙面の関係上で割愛しますが、大まかな中身としては「正当な理由もなく使用者が労働者を解雇した場合に生じる紛争を、早期に解決するために『解決金』の基準や仕組み」に関するものです。

従いまして、この制度が将来法制化させたとしても「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」解雇は、労働契約法第16条により「無効」となることに変わりはありません。しかし、解雇が「無効」になっても労働者が会社に復帰することは現実的ではなく、紛争の多くは金銭補償によって解決しているというのが実情です。その実情を考慮して、早期の紛争解決のために一定のルールや基準を定めておこうということが目的ということです。

また、欧米において「解雇規制の緩和」といわれるものも上記の「金銭救済制度」と似たものであり、「重大な理由がなくても使用者の都合で労働者を解雇できる。」ことを是としているわけではありません。従って、「正当性」の希薄な解雇の場合は高額の解決金が求められることは当然のことです。国によっては3000万円や月例賃金3年分を支払わされることもありますから、決して安易に労働者を解雇できるということは、世界中において行われていないということです。

「じゃあ結局は日本国内において解雇規制は緩和されないので、衰退産業から有望産業への労働移動は困難になるではないか。」とのご懸念もあります。もちろん衰退産業がやむを得ず剰員を「整理解雇」せざるを得なくなり、それにより「労働移動」は生じるかもしれません。しかし、「雇用の流動化」は「解雇規制の緩和」により生じるものではなく、労働者の自由意志により進展していくものと思います。希望する職種と労働条件があり、それに応じられるスキルをもった労働者は自らの判断で転職を実行するのではないでしょう。

いずれにしても、「解雇がしやすくなる」労働関係になるということは幻想でしかなく、将来にわたってあり得ないと思います。そして、使用者が正当な理由もなく安易に労働者を解雇することは今後も許されませんので、くれぐれも誤解のない様にしてください。

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