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No.160話:従業員に会社の権利を行使するときに注意すべきこと。

従業員を雇用した会社はその従業員を「指揮命令下」において業務に従事させます。適正な人員配置を行うべく従業員を「人事異動」と称して転勤させることや、病気により長期の療養が必要な従業員を「休職」させることがあります。また、会社の秩序を乱した従業員に「制裁」を加えることもあります。しかし、これらは会社の権利として当然に認められているものではありません。「権利」を行使するには根拠が不可欠になります。

従業員であれば年次有給休暇を取得する権利(取得にあたっては休暇の時季を具体的に指定することから「時季指定権」といわれます。)を有していますが、これを行使するには労働基準法第39条という法律を根拠としています。

一方、会社の「人事異動権」や「休職発令権」、あるいは「制裁権(懲戒権)」の根拠はどこにあるのでしょうか。実はこれらに関する法律はありません。そのため就業規則という会社側の従業員に対するルールを定めることで根拠を設定しています。すなわち、就業規則にこういった会社の権利を規定しておかなければ行使できないということです。根拠がなければ権利は存在しませんから、権利を行使する以前の問題ということになります。

もうひとつ権利を行使する上で大切なことがあります。民法第1条第3項における「権利の濫用は、これを許さない。」という条文です。すなわち、「いくら権利が設定されているからと言って、みだりに行使してはならない。」ということであり、濫用したとみなされる権利行使は「無効」扱いになるということです。

従って、就業規則に規定されていることを根拠にするだけはなく、権利行使にあたっては濫用とみなされない、相当な理由が必要ということです。例えば「人事異動」であれば、介護を必要とする親族と同居している従業員に転居が必要な異動を命じることは不当な負担を強いることから認められないということになります。「休職発令」であれば休業を必要としない程度の病状であるという医学的見解が複数の専門医からあったにも関わらず、「休職」を命じることはできません。また「制裁権」であれば第三者から見ても「それはさすがに厳しすぎる処分ではないか」という、いわゆる「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は認められないことになります。

いずれにしましても、つい「これは認められている当然の権利だ。何も問題ない。」と判断して会社としての権利を行使してしまいがちですが、「根拠が必要であること」と「権利の濫用に該当しないこと」に十分な注意が必要だということです。万が一、「無効」扱いになれば権利行使を決断した会社側にとって、とんでもないダメージを受けることになりますから、権利行使はあえて慎重に検討してから行うことを心掛けましょう。

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