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No.162話:雇用戦略は「3年後」を見据えること。
2023.08.02
ひと昔前であれば雇用戦略や労務管理は「5年後、10年後を見据えて」といわれました。「終身雇用」「年功序列」の日本型雇用システムが盤石であったころであれば、10年先を予測して雇用や人事労務に関する戦略を組んでいくことは「理にかなう」ことでした。
しかし、日本型雇用システムが崩壊しつつある現在は世の中の雇用環境の変化が激しく、10年先はおろか5年先でも予測がつかなくなっています。
おそらく多くの企業で5年後も「自社の事業内容に変化はない」とは言い切れないと思います。M&Aにより経営者が代わり、事業戦略も変わっているかもしれません。雇用戦略においては中途採用が強化され、現状の年齢別の労務構成が大きく変わっているかもしれません。あるいは人材の確保のためにこれまで圧倒的に大きなウエイトを占めていたパート・アルバイトが正社員登用の促進によって減少し、正社員のウエイトが大きくなっているかもしれません。すなわち、変化が激しいゆえに5年後はあまりにも遠く、予測がとても難しいということです。
とはいうものの「戦略」を立てる以上は、ある程度の未来予測を前提とします。その未来の最長スパンが「3年後」ではないかということです。「5年後では変化による予測のズレが大きくて戦略にひずみが出てしまうが、3年後であれば予測のズレも小さく戦略の修正を余儀なくされる可能性は低いだろう」というのが理由です。(もちろん1年後、2年後というスパンも考えられますが、戦略の対象とするには短い時間軸だと思います。)
では、この3年間の戦略を立てるにあたり、3つの留意すべき事項を私なりに提案させていただきます。
1つ目は「事業計画に則した人材の確保」です。
簡単に言えばラーメンの店舗運営をメイン事業としていた会社が、ケーキの製造販売も事業に取り組みたいと考えればケーキ職人を採用する必要があるということです。すなわち、事業計画に基づいた必要なスキルや経歴を持った人材を具体的に明示し、どのように採用・育成していくかの戦略が必要になります。
2つ目は「若年人材の採用促進」です。
「いずれは転職される。」という懸念はあるものの、企業の将来の担い手は現在の若い人材であることは間違いありません。事業活動の継続性を考えれば20代、30代の人材をある程度確保しておく必要があります。しかし、これがとても難しいことも事実です。募集をすれば簡単に確保できるとはいかないのが若年人材です。したがって、「どうすれば、3年後に必要とする若年人材数を確保できるか」の戦略を丁寧に組み立てる必要があるということです。
そして、最後は「定年制の廃止」です。
「60歳定年と再雇用」「60歳超の定年延長」が現在でのスタンダードですが、おそらく3年後は「定年」そのものの意味が問われていると思います。「労働力人口の減少」と「健康年齢の高齢化」を考えれば、労働者本人が働きたいと思う年齢まで働けるような世の中であることが当然求められます。すでに「定年制の廃止」に取り組んでいる企業が増えています。「能力の低下したシニアにいつまでも在籍されても困る。」と危惧する声もありますが、気力体力が低下すれば引き際はシニア自身がわきまえていると思いますので、あまり心配されなくてもいいと思います。
いずれにしましても、最長3年の雇用戦略、労務管理戦略を組み立てることが、最も現実的ではないでしょうか。
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