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No.163話:従業員とのトラブルが増える理由で考えられることは。
2023.08.09
以前はそうではなかったのにも関わらず、「退職希望者が例年になく多い。」「理由もなく遅刻・欠勤する従業員が増えた。」「メンタルヘルスの長期休職者が増加傾向にある。」「従業員同士の言い争いが多く、職場の雰囲気が悪い。」などの事象が急に現れたら、「採用環境」が緩んでないかのチェックをお勧めします。すべての原因が「採用環境の緩み」にあるとまではいいませんが、まず最初に疑ってみる項目の一つと思います。
「採用環境の緩み」と
は
「これまでは採用を見送っていたレベルのスキルや経験を有する希望者を採用するようになった。」また「採用速度の向上のために、面接回数の減少や適性試験といった工程を見直した。」そして、「求職者の興味を引くために、職場実態に合わない雇用形態での募集をした。」
などになります。いずれも背景としては職場の「人員不足」とそれに伴う現場からの早期の人員補充の要請が考えられます。では、「採用環境の緩み」がどのように労務上の諸課題につながるのでしょうか。
まず、
「これまでは採用を見送っていたレベルのスキルや経験を有する希望者を採用するようになった。」
ケースです。
高いスキルを維持していた職場に既存従業員よりもスキルの劣る新入社員が入ってくればどうなるでしょうか。職場にとっては必要な「人数」は補充されたものの、クオリティを維持するために従来よりも新入社員の仕事の確認を必要とします。これは既存従業員にとって手間が増えることになります。また、新入社員にとっては自分が保有する能力以上の仕事を求められ、大きなストレスを抱えることになります。このことから職場に軋轢が生じ、トラブルを誘引することになります。
次に
「採用速度の向上のために、面接回数の減少や適性試験といった工程を見直した。」
ケースです。
これにより、「基本的な社会人としての適格性」「虚偽の経歴や資格」あるいは「直前企業との関係性」といった、本来は見抜けるはずの採用希望者の決定的な「採用見送り」に該当する事案の「見落とし」を起こす可能性が高くなります。例えば「前職で同僚とのトラブルが多かった」という情報を得る機会を得ずにその人材を採用し、新しい職場でも同僚とのトラブルを起こすというケースです。
最後に、
「求職者の興味を引くために、職場実態に合わない雇用形態での募集をした。」
ケースです。
例えば在宅勤務については従来、最低2年間は会社に出社して商品知識や業務の進め方、人間関係を構築できた従業員を対象としていたにも関わらず、入社3か月目から希望者全員に在宅勤務を認めるというものです。このことは「商品知識の薄いことによる商品担当者への問い合わせの増加」や「誤った商品発注と手順を間違った代金請求」、そして「人間関係が希薄なことによる各職場との連携不足」といったことを引き起こしかねません。これは「職場の同僚の負担増」をもたらすことになります。
「採用環境の緩み」がすべての労務上のトラブルの原因とは言いません。当然必要であれば採用条件などを緩めることはあると思います。しかし、
これまでの「採用環境を緩める」にあたっては、それによって生じるリスクをしっかりと想定し、その対策も講じることも必要だということです。
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