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No.167話:最低賃金40円アップを「奇貨」と考えること。

今年も最低賃金の見直し時季がやってきました。8月に都道府県労働局の最低賃金審議会から答申のあった引き上げ額は39円から47円という内容で、昨年(30円から33円)よりも大きな上げ幅となっています。

先進国の中でいつの間にか低位に推移するようになった日本の労働者の賃金を、一刻も早く改善しなければならないという政府の方針は理解できるものの、最低賃金ギリギリで賃金を支給していた小規模企業の事業主にとって、深刻な死活問題であることに間違いありません。

その理由としては、単に最低賃金水準の労働者の賃金を上げるだけではなく、それ以外の労働者の賃金も最低賃金水準の労働者と「逆転現象」が起こらないように連動して賃金を引き上げる必要があるからです。この対応により企業にとっては全体の人件費が底上げになり費用の増加につながります。

企業としては費用増、そして収益の低下を回避すべく、パート・アルバイトの人員を減らし、あるいは勤務時間を減少させるなど、人件費の調整を行うという対策を当然のことながら講じたいところです。しかしながら、昨今の労働者不足を考えると、どうにも「難しい」と言わざるを得ません。

いずれにしても、最低賃金の大幅な引き上げは当面は続きそうですから、このようなジレンマを最低賃金の水準で労働者を雇用している企業の経営者は、ここ数年抱え込まなければならないということになります。また、労働者は賃金水準の低い企業から高い企業に移動するのが世の常ですから、継続して人員不足に頭を抱えることにもなります。果たして、本当に耐えていけるのでしょうか。

この悩みへの対策の一つを上げるとしますと、労働者の賃金の「最低水準」をある程度の水準まで思い切って引き上げることです。少なくとも3年は悩まなくてよい程度の金額までは見直してみてはいかがでしょうか。当然に「人件費増」ということになりますが、人員を削減して全体の人件費を調整するのではなく、増加した人件費を吸収して損益が維持できるような方策を考えてみることです。

例えば、「他の経費を抑える。」「原価を下げる。」という方法もありますが、もっと直接的に売上高を伸ばす方法を考えてもいいのではないでしょうか。すなわち、販売価格の引き上げである「値上げ」です。

「そんなに簡単なことでない。」「顧客が逃げる。」「取引先を失う。」という懸念はもっとものことと思います。しかし、「何もしない」ことよりも今は「とにかく何かに取り組んでみる」ことの方が大切だと思います。「ピンチをチャンスに変える」と考えることも必要ではないでしょうか。

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