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No.173話:人事担当者の提案を公正公平に受け止めていますか。

人事担当者は従業員が会社の事業運営に有効に機能するために日々、「人材の募集・採用」「労働条件の見直し」「従業員の健康管理」「職場の環境整備」といった労務上の諸問題に対応しています。ここで認識していただきたいことは、彼らは「労務管理がどのようにすれば、会社経営が上手く機能するか」に向けて、知恵を絞り対応策を企画立案しているに過ぎないということです。彼らが提案する労務管理上の諸施策に対して、GOサインを出したり、再検討を命じたりするのは社長であり経営者です。

「職場である管理職からパワーハラスメントされた。」と被害従業員が相談にきて人事担当者が対応したとします。そして、人事担当者は実態把握のための当事者および同じ職場の従業員からヒアリングを行い、当該管理職の行為がパワーハラスメントであり懲戒処分「けん責」に該当するとの結論に至ったとします。しかし、その加害管理職が経営者のお気に入りの従業員であり、加害管理職を守るべくその経営者が「この程度でパワハラとは厳しすぎる。注意だけでいい。」と異議を唱えて、人事担当者の処分案を不適切なものに変更させてしまうことがあります。

あるいは自動車通勤をしている従業員が何度か「酒気帯び運転」で捕まっており、その都度会社から改めるように注意をしているにも関わらず、またもや「酒気帯び運転」で警察に捕まったとします。人事担当者が「さすがに今回は見逃せない。前回『今度、警察に捕まったら辞めてもらう。』と伝えているので解雇します。」と経営者に提案しても、「あの従業員は年老いた母親と二人暮らしで、失業するとたちまち生活困窮者となってしまうので、解雇については勘弁してやってくれ。」と個別の事情を慮ってしまい、その処分案を見直しように指示をしてくることもあります。

経営者による上記の処分の変更は、いずれの場合も「情状酌量」の度を越しており不適切と言わざるを得ません。人事担当者は会社に雇用されている一人の従業員でしかなく、会社の判断を求める提案は出来ても経営者ではありません。どれだけ客観的に適切な処分案を提案しても、経営者に覆されればそれまでということになります。労務管理において不適切な事例が残ってしまい、将来に大きな悪影響を及ぼしかねないことになります。

すなわち、先ほどのパワーハラスメントを行った管理職は「自分はどんなことをしても経営者のお気に入りなので、クビになることはない。」と開き直り、ますます傍若無人に職場で振る舞いかねません。「酒気帯び運転」を繰り返す従業員も「会社は自分の生活状況を理解してくれている。だから今後も多少は酒気帯びで運転しても解雇されるということはない。」とタカをくくって「酒気帯び運転」を改めなくなるかもしれません。

では、その行きつく先はどうなるでしょうか。パワーハラスメントによる精神障害を発症させた従業員からの会社への損害賠償請求でしょうか。「酒気帯び運転」により大けがを負った人からの会社への損害賠償請求でしょうか。それを回避するために行った人事担当者の提案を無にしたのは誰でしょうか。経営者の覚悟が問われていることに気が付くべきと思います。

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