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No.177話:労働者の視点で奥深く考えることの大切さとは。

近年の労働力人口の減少が深刻化する中、シニア労働者の確保のために定年を60歳から65歳までに延長する企業が増えています。このこと自体は大変喜ばしいことですが、全てのシニア労働者に歓迎されているわけではないようです。「定年が延長されることに反対する人がいることは意外だ。」と思われるかもしれませんが、制度見直しの内容に問題があることから、不満を感じるシニア労働者が多いという実情があるのです。

例えば、「60歳から65歳の定年延長にあたり退職金の支給も60歳から65歳に変更する。ついては支給金額も勤続年数が増えるので増額される。」というもの。一見すると「当然の扱いでは。」と感じるのではないでしょうか。しかし、目の前に定年を控えて、待ち望んでいた退職金の支給が5年延長されることで、予定していた定年後の人生設計がくるってしまう労働者もいます。

あるいは、ある人には「定年後は再雇用制度を活用して、勤務日数を減らして持っている資格を活かして副業に取り組んでみたい。」という予定を変更せざるを得なくなるかもしれません。シニア労働者にとっての5年は若い世代の人以上に「長い」と感じる時間でもあります。長いマラソンを走っていてゴール目前で、ゴールの位置をさらに延ばされるようなものです。

また、「いよいよ退職金制度を導入しようと考えている。ついては、その原資として毎年の賞与の資金の一部を充当したい。将来の定年時に退職金としてもらえるのだから不満はないだろう。」と経営者が考えていても、「今のご時世、この会社に定年まで勤める人がどれだけいるのか。退職金よりも今もらえる賞与の方が大切だ。」と受とめる若い世代の従業員には喜ぶべき制度と感じてもらえないのかもしれません。

会社として「従業員に喜ばれる制度変更を行えた。」と思っていても、前述のように新制度の影響を検証してみると、すべての従業員が歓迎してくれるとは限らないことがあります。いわゆる「制度変更の落し穴」というものです。場合によっては会社が「良かれ」と思ったことが、従業員にとって「モチベーションが下がる。」「転職を本気で考えざるを得ない。」といった逆効果を及ぼす可能性もあります。

「従業員が喜ぶはず。」という視点は大切なのですが、少し冷静になって「本当にこの制度改定や新制度導入がすべての従業員が受け入れてもらえるものか。」を検証してみることが大切ではないでしょうか。もちろん、すべての従業員にとって歓迎される制度設計をすることはとてもハードルの高いことではありますが、不満を感じる従業員への配慮を講じることも制度設計の成功の秘訣であることもお忘れなく。

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