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No.185話:備えをすればするほど「憂い」は生じる。

本年、元旦に発生した「能登半島地震」は石川県志賀町で「震度7」を記録する大地震となりました。家屋の倒壊、土砂崩れ、そして津波による被害で多くの方の命が失われました。また、翌日には羽田空港において「能登半島地震」の被災者への救援物資を運ぶために離陸準備をしていた海上保安庁の飛行機と、着陸のため滑走路に侵入してきた旅客機が接触する事故が発生しました。旅客機の乗客乗員は全員無事に脱出できましたが、海上保安庁の乗員6名の内、5名の尊い命が失われました。謹んで心より哀悼の意を表します。

災害や事故が発生すると常々思い起こすのが「備えあれば憂いなし」という言葉です。能登半島は地質学的には有名な断層密集地で、これまでも大きな地震が何度も発生していました。また、ここ数年でも大きな災害をもたらした地震が発生しており、住民や自治体もそれなりの地震への「備え」は怠っていなかったと思います。しかしながら、今回の「能登半島地震」はその「備え」をはるかに上回る強さの地震であり、大きな災害をもたらしてしまいました。

一方で、今回の羽田空港での飛行機同士の接触事故は、旅客機の乗員の冷静かつ迅速な対応で「全員無事脱出」という、世界でも賞賛される快挙を成し遂げました。これはひとえに日頃の緊急時の脱出訓練という「備え」の賜物によるものといえます。まさしく「備え」が被害を最小限に抑えた事例であります。

人間は災害や事故という「不測の事態」に遭遇し、ときに打ち負かされて「備え」の無力さを感じ、また、ときに最小限の被害に抑えることで「備え」の意味を実感します。そして「不測の事態」に翻弄されながらも「備える」ことを続けます。それでも、私は「備えあれば憂いなし」という言葉には否定的です。「備えても憂いは残る」ものです。「備える」ことで「憂い」が無くなると思うことに人間の慢心があると思うのです。

そして、「備える」ことで別の「憂い」が生じることも忘れてはいけません。「備え」を嵩じることは費用が嵩むことになります。震度7の直下型大地震を想定して家を建て直す。山崩れを回避するためにコンクリートブロックで補強する。津波に備えて防波堤を補強する。これらはとんでもない費用が必要になりますし、実現するには借入や予算措置を講じるといった「憂い」を持つことになります。

会社の事業運営も同じで、「不測の事態」に「備える」にはそれ相応の費用が必要になります。ご自身が病気で倒れたときの休業損失のために加入する生命保険も「備え」ですが、当然、保険料という費用が必要になることと同じです。しかしながら、費用が掛かるからといって「備え」を怠ることはリスクマネジメントができていないことと同じです。「備える」ことは「憂い」が生じますが、そのことを覚悟の上で本来の「憂い」へ「備える」ことを忘れないようにしたいものです。

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