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No.194話:命令系統は1つに限定すること。

「船頭多くして船、山に上る。」ということわざがあります。「船を動かす方向を指示する船頭が何人もいて、いろんな方向に指示を出すと目的と違う海域どころか、本来考えられない山に船が上ってしまう。」という例えで、チームに複数のリーダーいるとメンバーが混乱して機能不全に陥ることを意味しています。

一見、笑い話に聞こえますが現代の会社組織にもよくあることです。課長から「今年はA商品がトレンドなので10万個を発注しておいて。」と指示された従業員が、指示通りに発注し納品が完了したところ、さらに上司の部長が「誰がA商品を発注しろと言った。こんな商品が売れないぞ。A商品は返品してB商品を直ちに100万個用意して。」と課長とは違う指示をするというケースです。

従業員としては上位職から具体的な指示があった以上は従わざるを得ません。ましてやこのケースでは後からの指示が課長よりも上位職の部長ですから、異議を申し出ることは通常考えられません。「課長の指示と違いますが、よろしいのですか。」と問い合わせても「部長の自分の指示どおりにしなさい。」と言われれば、当然にその通りになります。

課長と部長の意思疎通ができれいれば、双方で連絡を取って確定した発注商品と発注数が課長を通じて職場に指示が降りて、滞りなく業務が進むはずです。しかし、課長と部長の関係が悪く円滑な意思疎通ができていなければ、「自分の指示が正しい。自分の指示に従いなさい。」という至って馬鹿馬鹿しい事態が生じかねないのです。これでは職場は混乱し従業員の負担が増えてしまいます。実はこれとよく似た事例は皆さんの職場では枚挙にいとまがないのではないでしょうか。

しかも、このケースでは10万個のA商品を従業員が残業して返品し、返送料を別途支払い、B商品を再度発注し、B商品の納品を受けるというプラスアルファの費用が生じる可能性があることも踏まえる必要があります。会社にとっては無視のできない損失を発生させることになります。

規模の大小にかかわらず、どんな会社でも同じ組織系統において管理職同士でのイニシアティブの取り合いが起こり得ます。自身の影響力を組織に誇示したいがために、職制を飛び越えて職場に指示を出す、あるいは上位職の承認を得ずに部下に業務命令を行うなどは顕著な例です。

指示系統が複数あるという状態は組織運営上、あってはならないことです。「自分の方が偉い。」という利己的な動機で指示を出される従業員は堪ったものではありません。「職場に指示を直接下すものは一人だけ。」という当たり前の原則をしっかり順守していただきたいものです。

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