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No.197話:業務命令権を使用者自らが放棄してはいけない。

先日、クライアントの経営者から「営業部門の人員不足により、ある従業員に事務職から営業職に異動するように命じたところ、『営業はやったことがないので、会社からの異動は拒否します。どうしても異動を命じるならば退職します。』と拒絶された。どうすればいいか。」というご相談をいただきました。

この経営者にとって従業員の回答に大変当惑しており、結果としては「会社全体が人員不足であり、この従業員が退職されても困るので無理をせずに営業職への異動は見送ろうと考えている。」ということでした。悩んだ挙句の結論であり、この経営者の判断は理解し尊重しつつも、「そのご判断は今後の労務管理において、よろしくありません。」とお答えしました。

その理由としては、まずもって会社から命じられた人事異動を従業員が「好き嫌い」というだけで拒絶したことで、会社が人事異動を取りやめることは企業秩序を維持する上で好ましくないからです。「私は事務職に限定されている雇用契約であった。」といった正当な理由をもって拒絶するのであればまだしも、「その仕事は嫌です。」という理由を唯々諾々と受け入れて、その人事異動を見送るようでは今後も同様な理由で人事異動を拒絶する従業員が出てくる可能性があります。そうなれば、会社は適正な人員を適宜配置できなくなり、事業運営に支障を来すことになります。その行き着く先は極端な話ではありますが、廃業を選択することになりかねません。

ほとんどの日本の会社には雇用契約や就業規則にもとづき、従業員を必要な部署に適宜に移動して配置できる人事異動権を有しています。また、今年4月1日からは労働条件通知書に「就業の場所」「業務の内容」について変更をすることがある場合は、その旨と変更の範囲を明記することが義務付けられています。これらは従業員が人事異動により「就業の場所」「業務の内容」が変わることを了承していることに他なりません。

にもかかわらず、正当な理由もなく「嫌だから」というだけで会社が命じた人事異動を拒絶することは、雇用契約において許されることではありません。ましてや、「嫌です」といわれた会社も「辞められると困る」というだけで、人事異動を見送るようでは労務管理を行っているとは言えません。

人事異動を拒絶されても部署(業務)変更を命じるのが労務管理の大原則です。それでも前の部署に留まれば「異動命令違反」で、その従業員を懲戒規程に則って処分するほかありません。また、人事異動命令に不満を感じて「退職」を選択するのであれば、甘んじて受け入れる他はありません。

もっとも回避すべきは「人員不足」という会社の深刻な悩みを材料に、従業員が会社の足下をみて自分にとって有利な労働条件を会社に約束させようとすることです。このような勘違いをさせないために、会社は躊躇せずに毅然として従業員に業務命令を発して履行する他ありません。

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