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No.200話:65歳定年延長の法改正の可能性はあるのか。

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以降、「高年齢雇用安定法」)第8条において、定年は60歳を下回ってはならないとされています。この「60歳定年制」について経営者から「65歳定年に法改正されるのではないか。」というご質問をいただくことが増えています。

現状は高年齢雇用安定法第9条において「65歳までの雇用確保措置」が事業主に義務付けられており、労働者が希望すれば再雇用制度や定年延長により65歳まで雇用しなければならなくなっております。また、すでに多くの企業で「65歳定年」が導入されています。それゆえに「65歳定年制」が早晩、法改正により現実的に行われると思われる経営者も増えてきております。

しかし、私は「65歳定年制」への法改正については懐疑的です。その理由の一つは、法改正により「65歳定年制」が導入されると「困る」会社がまだまだ沢山あるからです。「困る」というのは、「働かない」人材や年齢とともにパフォーマンスが落ちてきた人材の労働条件を、「60歳」でリセットできなくなるからです。

「60歳定年」であれば定年再雇用後の労働条件をその人材の能力に合わせてダイナミックに再設定することができますが、定年が「65歳」になれば困難となるからです。「困る」会社が多いのであれば、混乱を避けるために政府は無理をして法改正はしないということです。

また、日本は欧米諸国に比べて「解雇規制」が厳しく、正当な理由がないと従業員を「解雇」することが困難です。しかし、その一方で欧米諸国にはない「定年」を設定することでバランスをとっています。従って、「60歳定年制」を「65歳」に延長する、あるいは廃止することになれば、「解雇規制」の緩和見直しの要請が経済界から出てきかねません。そうなれば、国内の労使間で大きな論争に発展することになり政策としてのリスクが生じます。

もう一つ、「60歳定年」は労働者側にとっても「理にかなっている」制度であるからでです。私自身が「60歳」を目の前にして実感するのですが、「60歳」を前後にして親族や知人友人がガンや脳梗塞と言った大病を患うことが増えてきます。「衰え」が始まる年齢ですから仕方のないことですが病気によって著しく体調を崩したり、あるいは不幸にして亡くなってしまうこともあります。

もちろん、「60歳」を超えても精力的にバリバリ働く方もいますが、この年齢を超えると体力や健康、意欲についての「個人差」が顕著になります。「60歳と65歳。5歳違いで大きな差はないでしょう?」と思われるかもしれませんが、この年代の5年は非常に大きいものです。

労働者には「60歳が近づくにつれて体力に自信がなくなった。定年を機会に自分にあった働き方に変えよう。健康なうちに旅行や趣味のゴルフを楽しむ時間を確保しよう。」と思っている人も多いと思います。そういう方には「65歳定年に変わりました。」は目の前のゴールラインを先に延ばされたことと一緒になり不満を感じることになります。

以上のように「65歳定年制」への法改正は、労使双方すべての人にとってバラ色の政策とは言えません。従って、ここ数年で一足飛びに導入されることは私はないと思っています。また、各企業で「65歳定年制」への改正は自由ですが、前述のようなリスクをはらんでいますから導入にはくれぐれも慎重に行うようにしてください。

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