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No.201話:使用者は従業員との約束は全力で守ること。

「当社では休日出勤はありません。」「時間外労働は月の実績は10時間未満です。」「入社後2年間は希望する部署に配属します。」「入社5年間は転居を伴う異動はありません。」「入社1年後からは希望があればテレワークが可能です。」などの条件を求人広告に掲載している企業をよく見かけるようになりました。人材難の中、どの企業も求職者の興味を引く努力をされているようです。

このような求職者へのアピールは、採用後もその通りに実行されていれば何の問題もありません。問題はその通りになっていない場合です。例えば「休日出勤はありません。」としていながら、実際には事業が想定以上に忙しくなり、会社から入社して間もなく休日出勤命令が行われるというケースです。求人のときの条件とは違いますが、就業規則に「会社は休日出勤を命じる場合がある。」と規定していれば、直ちに法に触れることはありません。

また、急な大型受注が入り生産体制を強化すべく、従業員に臨時に通常よりも多く時間外労働を命じる事態が生じる場面もあります。その結果、その期間については「時間外労働は月10時間未満」という条件をはるかに超える時間外労働が生じるかもしれません。

あるいは「入社後2年間は希望する部署に配属します。」「入社5年間は転居を伴う異動はありません。」「入社1年後からは希望があればテレワークが可能です。」と求人広告では謳っていても、会社の事業を取り巻く環境が変わって、「入社後、半年で希望する部署から別の部署に異動となる。」「入社1年で転居が必要な異動となる。」「入社3年たってもテレワークでの勤務を認めてもらえない。」など、その通りに実行できなくなることも十分にあり得ます。

会社サイドとしては「求人広告の労働条件はあくまでも求職者へのアピールであり、確約したわけではない。事業の都合なのだから変更することもあり得る。」という事情があると思います。「雇用契約書にも就業規則にも求人広告と同様の労働条件を明記していないから問題はない。」という主張も理解できます。しかし、従業員は「求人票に記載されていたことと話が違う。約束が守られていない。」と受け取ります。

「時間外労働が10時間を超えて20時間になっても、従業員からは何の不満もなかったですよ。」と人事担当者はいいますが、最近の従業員は不満や不信を口に出すことはありません。「ただ、黙して語らず。」であり、機会を見つけて静かにその会社を去っていくだけです。

確かに会社にとっては求人広告での「約束事」は些細なことかもしれません。しかし、従業員には「その条件であれば、この会社で働いてみよう。」と期待を抱いて、その会社の門をたたくのです。その期待を裏切られれば次の会社への転職を選択します。それだけにとどまらず、「約束を守らない会社だ」とSNSなどにクチコミをされて、労働市場での信頼も失うことになります。そうならないためにも、求人条件の設定には「守れない約束はそもそも提示しない。」という姿勢に徹することに限ります。

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