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No.206話:パワハラ防止の目的を見間違えないこと。

職場のパワーハラスメント(パワハラ)は、労働局に寄せられる相談では現在において断トツのトップであり、相談件数は増える一方です。パワハラは被害従業員の心身への深刻な影響を招くことから、近年において使用者にその防止措置を講じることを義務付けています。

さて、企業においてパワハラ防止策を講じることは良いのですが、一部の企業では過度に対応するあまり職場で無用の混乱を招いているように思います。例えば、「パワハラ被害を受けている。」という従業員の相談を受けて、しっかりと状況確認や同じ職場の同僚から情報を収集してアクションを起こすべきところ、いきなりパワハラ行為者とされる上司を呼びつけて注意指導をしてしまうというものです。極端な場合は行為者とされる従業員に対して懲戒処分を行う、あるいは被害従業員に対して謝罪を命じるという事例も散見されます。

ご存知の通り、パワハラの定義は「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるものであり、これら3つの要素を全て満たすもの。」とされています。とりわけ、「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」の判断は難しく、受け手にとっては「相当な範囲を超えている。」と感じても、業務指示や教育指導を行った上司は「適正な範囲内のもの」と認識して行っているものです。当然のことながら、ここに認識の相違が生じてしまいます。

にもかかわらず、パワハラ被害を受けたと相談してきた従業員の相談を鵜呑みにして、良く調べもせずに行為者とされる上司を一方的に処分すればトラブルに発展するのは当たり前です。実際に最近は処分に対する上司からの強い異議申し立てから裁判に至る事案も増えてきています。

パワハラの相談を受ければ「対応すること」は当然ですが、「対応すること」と「すぐに処分をすること」とは全く違うということを踏まえておく必要があります。パワハラ防止措置とは、まず使用者から「パワハラは許されない行為であること」を周知して、従業員の意識改革につなげて職場でのパワハラを生じさせないことが取り組みの入口です。

その上で万が一、「パワハラの被害を受けた(受けている人がいる)」という相談が寄せられれば、迅速に職場やその周辺から情報を収集して、パワハラの恐れがある場合は問題が大きくならないように、行為者とされる上司などに丁寧な説明を行って指導の在り方を改めてもらい、真にパワハラ事案に発展しないようにすることが次に重要な対応となります。

それでも従業員の行いが改まらず、職場でパワハラに該当する行為に発展したときにはじめて、その事案の内容に応じた適正な処分を行うことになります。段階も踏まずにいきなり処分をすることがパワハラ防止措置ではありません。パワハラは会社の存続を左右するほどの重大な問題です。また、被害側、加害側双方の従業員の人生に大きな影響を及ぼします。だからこそ、一つ一つ丁寧に対応することが求められることを忘れてはならないと思います。

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