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No.207話:正社員で雇用することをリスクと考えないこと。

「我が国から『非正規』という言葉を一掃する」2016年の演説で故安倍晋三元首相が「同一労働同一賃金」に取り組む際の言葉です。すでに過去の話となってしまいましたが、バブル崩壊までは日本の会社では「正社員」での雇用が一般的であり、パートタイマーやアルバイトは当時の労働者に占める割合は低く、雇用形態も「正社員」の仕事を補助する短時間労働者でした。

ところが1990年代の初頭に国内のバブル経済が崩壊し、以降「失われた30年」と言われるような経済の長期低迷期に入ります。日本企業の多くが経営の危機に陥り、「生産調整」に続いて「リストラ」と呼ばれる「雇用調整」をせざるを得ない状況になります。

欧米企業とは違い「解雇規制」が厳しく正社員の「レイオフ」が困難な日本では、事業環境が厳しくなればいつでも期間満了時に労働者を「雇止め」ができる「期間の定めのある」形態で雇用し、なおかつ正社員とほとんど変わらない仕事をさせるようになりました。すなわち「非正規」と呼ばれる労働者の登場です。

とりわけ2000年前後に学校を卒業し社会人となる時期を迎えた若い人たちは、極めて厳しい就職氷河期に遭遇し、のちに「ロスジェネ世代」と呼ばれることになります。彼らは正社員での雇用が難しく、その多くが「非正規」で雇用されることになり現在に至るまで社会に大きな禍根を残してしまいました。

2010年代後半以降は「コロナ禍」はあったものの、雇用情勢は「売り手市場」で推移しています。しかし、「非正規」労働者は「一掃する」とまでには至っていません。何故でしょうか。多くの経営者が30年にわたる景気低迷期を経験してしまいました。その感覚が残っているため「いつかまた景気が悪くなるかもしれない。そのときに正社員では解雇が難しい。」と思い、「非正規」での雇用を続けてしまうようです。(企業の「設備投資」が伸びないのも同じような理由と言われています。)

確かに将来のことは見通せません。また不景気になるかも知れません。しかし、我々は「非正規」雇用が社会の不安を招き、多くの人を不幸にしたことを身をもって経験しています。そして、何よりも正社員で雇用することはリスクではないということを再認識しなければなりません。。

雇用が安定し、生活が安定すれば働く人の意識が変わります。「やりがい」「働きがい」が高まり、その人の生産性は向上していきます。働く人の生産性が向上すれば会社の収益向上につながります。会社が儲かれば労働者の賃金も上がり、生活も良くなります。生活が良くなれば市場に需要が生まれ景気が良くなり社会の安定に大きく寄与します。

少々、「きれいごと」と聞こえるかもしれませんが、日本の社会の変革期は来ていると思います。今、変わらなければ、いつまでたっても「失われた30年」を引きずったままになりかねいと思います。そうならないためにも、そろそろ労働者を正社員として迎い入れることを当たり前と考えるようにしたいものですね。

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