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No.210話:従業員の自己啓発のための「居残り」は容認すべきか。

「仕事の速度が人よりも遅いので、どうしても残業せざるを得ない。原因は自分であり、会社ではないから残業しても残業代はいただきません。」「入社して間もないため、仕事を早く覚えたい。終業時間後に会社の資料見て、パソコンを利用させていただきますが、勉強しているだけなので仕事ではありません。当然、残業代は請求しません。」このような従業員の申出は、基本的には本心であると思います。そして、「そういっておきながら、後日まとめて残業代を請求してやろう。」という人はほとんどいないと思います。

このような従業員からの申出に対して、会社としては「そうか。そういう考え方であれば、あえて始業時間とともに直ちに退社しなさいとは言えないね。適当に切り上げて帰ってね。」と残業を認めているのではないでしょうか。「仕事の習得に前向きな従業員の意欲を削ぎたくない。」という気持ちももっともなことであり、従業員の育成のためにも見過ごすこともあると思います。

しかし、それでも会社としては「その意欲は認めるが、残業としては許可できないので終業時間とともに退出してくれ。」と従業員に告げざるを得ません。「世知辛い世の中になったものだ。」と思われるかもしれませんが、この手の残業を認めることは労務管理上のリスクを放置してしまうことになるからです。

何故ならば、従業員が「この居残りは仕事ではないんだ。」と理解していても、家族や周囲の人間が同じように理解している保証はないからです。万が一、この従業員が突然亡くなって、その原因が「過労によるもの」と診断された場合はどうなるでしょうか。「そういえば夫は新しい会社に転職してから、いつも帰宅が遅かった。『仕事が忙しくて、残業している。』と言っていたが、給与明細を見ても残業代は支払われていなかった。きっと会社にサービス残業をさせられて心身ともに参っていたのかも。」と家族は考えるかもしれません。

もう、その従業員に真意を確認することはできませんから、そうなれば家族は会社に対して未払いの残業代を請求してくるだけではなく、過労死に及んだ損害賠償の支払いも求めてくるかもしれません。その時になって「従業員の育成に良かれと思って認めていたのに、こんなことになるとは思っていなかった。」といってもあとの祭りです。

不測の事態を想定して「自分が希望して、勉強のために会社に居残っているだけで仕事ではありません。万が一、自分に何かあっても自分、もしくは家族が会社に損害を求めることはしません。」という誓約書を書いてもらう会社もあります。しかし、会社に居残って仕事のパソコンを動かして、仕事に関する資料を作成していたなどの事実があり、過労死と認定されるような時間に及んでいれば、そんな誓約書は意味を成しません。

今の世の中において労務管理上のリスクを回避するには、会社が認めない「居残り」はいかなる理由があっても「させない」ことです。そして、認めない以上は始業時間前の職場での「朝活」も、終業時間後の「居残り勉強」も「一切させない」に徹する他ありません。「世知辛い」かもしれませんが、仕方のないことと考えるようにしましょう。

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