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No.212話:書面の取り交しは労務管理の基本中の基本です。

クライアントから労務トラブルに関するご相談を受けていて感じることは、「労務管理において、客観的に証明できる書面が少ない会社ほどトラブルが多い。」ということです。言い換えれば会社の労務管理が不十分であり、そのことを労働者に付け込まれて無用な紛争を生じてしまっているように思います。

例えば「従業員と話し合って、本人も了解の上で賃金を下げたのに、後から『一方的に賃金を下げられた。納得できない。』と言ってきた。」という「不利益変更」の場合、「本人も了解した。」という「口約束」だけでは、個別同意を客観的に証明できませんから会社が不利になって当然です。

就業規則に規定する服務規律を守らないことの多い従業員に対して、「仏の顔も三度まで」と「次に同じことを行ったら辞めてもらうよ。」と通告していても同じです。再び服務規律を違反して「前回、伝えた通りに退職届を提出してね。」と伝えても、その従業員が「そんな約束はしていない。退職届を出すつもりはない。解雇したいならすればいい。」と開き直られることになりかねません。

「遅刻や欠勤が多い」ことを理由にその従業員を解雇しても、出勤簿の整備が不十分で遅刻や欠勤を繰り返している実績が記録されていなければ、後日の従業員と民事訴訟で解雇の正当性を争ったときに会社が残念な判決を受ける可能性が高くなります。

以上のような思いがけない労務紛争が生じたときに、経営者からよくいただくのが「こんな違反行為を繰り返している従業員なのだから、クビになったって当然だろう。何故、従業員は反省もせずに異議を申し立ててきて、なおかつ紛争で会社が不利になるのだ。」という疑問の声です。確かに経営者からすれば常識的に考えて、紛争に発展することのない「従業員が原因」の事案であるかも知れません。しかし、それでも「こんな処分は不当だ。」と従業員が訴えてくるのが最近の傾向です。そのときに会社の客観的事実を証明する資料に不備があれば、不本意な結末を招くことがあることも事実です。

「以前では考えられないことだ。」というお気持ちはその通りかと思いますが、前述の事例のように客観的な証拠資料が乏しければ、経営者がいくら「正当な理由がある。」と主張しても紛争では不利な戦いを強いられてしまいます。それが現実であるということを認識していただき、煩わしいことではありますが労務管理において準備しておく他はありません。

すなわち、労働条件を見直すのであれば、従業員と話し合って合意した内容を労働契約書のような書面に記載し、かつ労使双方が記名捺印しておくことです。あるいは服務規律違反者に対して「再度の違反行為があり、処分対象となったときは退職届を提出します。」と誓約書を出させるようにすることです。「遅刻・欠勤が多い」ということを証明するために、出勤簿には出勤、退勤時間を記録しておき、かつ「二度と遅刻・欠勤をしません。」との始末書なり提出させることです。

故意か否かは分かりませんが、従業員は「自分にとって都合の悪いこと」を覚えていません。そして、不明確なことは「自分にとって都合よく」解釈するものです。そのことを前提にして、会社の労務管理の不備を突かれないようにあらゆる事実を記録しておくことを忘れないことです。

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