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No.221話:労使協定の届出における「印鑑不要」の意味とは。
2024.09.18
令和の時代に入ってから、多くの行政手続きにおいて申請者の印鑑の捺印が必要とされなくなりました。雇用保険、労災保険、健康保険といった社会保険の各種申請、届出手続きについても、全てではありませんが申請者である事業主の印鑑捺印が省略できるようになりました。
これにより行政手続きに関する利便性が格段に向上しましたが、一部の事業主においてはこの申請、届出に関する手続きの「印鑑捺印の省略」に対して大きな誤解をされているように思います。その顕著な事例が「時間外労働・休日労働に関する協定届」、いわゆる「36協定届」です。
「1年単位の変形労働時間制に関する協定届」も同様ですが、「36協定届」は労使間で協定を締結したことを所轄労働基準監督署に届出するものです。すなわち、「法律に基づいて時間外労働と休日労働について、このような内容で協定を結びましたので届出します。ついては、時間外労働と休日労働を実施しても法律違反を問わないでください。」という主旨のものです。(時間外労働と休日労働は「36協定届」を所轄の労働基準監督署に届出して、はじめて法律的効果が生まれます。)
本来は「様式第9号」に締結した労使協定の内容を記入して、「労使協定書」の写しを添付して、事業主が事業主印を押印して届出をします。ただし、近年の「36協定届」の手続において、「様式第9号」に労使双方の代表者の記名捺印があれば、「労使協定書」と扱うこととし、別途で「労使協定書」を作成し、写しを添付する必要が無くなりました。
さて、今回の行政手続きにおいて、「事業主印の押印を省略して良い」ということになったわけですが、「36協定届」も届出に際して労働者の過半数代表者の捺印もない、事業主印の捺印のない「様式第9号」の提出でこと足りるようになりました。労働基準監督署も全く問題はなく通常通り受理します。
では、問題は何かということです。
「届出」については「印鑑捺印の省略」となりましたが、肝心の「労使協定」は別であるということです。
「労使協定書」は労使間で合意した内容を文書に記載して、後日に「そんな約束はしていない」と異議が出ないように労使双方の代表者が記名捺印するものです。
従って、労使双方の記名捺印がある「労使協定書」、もしくは届出した「様式第9号」と同じものに労使双方の記名捺印があるものを保管していなければ、「そんな約束はしていない」と異議が出たときに紛争が生じるということになりかねません。
政府も令和2年12月に厚生労働省労働基準局が公表した「労働基準法施行規則等の一部を改正する省令に関するQ&A~行政手続における押印原則の見直し~」の番号「1-5」において、
「労使協定書」について「引き続き、記名押印又は署名など労使双方の合意がなされたことが明らかとなるような方法で締結」する
ことの注意喚起を行っています。
以上のように
「届出」での「印鑑捺印の省略」と、労使の約束である「労使協定書」の記名押印は別です
から、くれぐれも誤解のないようにお願いいたします。
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