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No.232話:「辞められた困る」と労働者の要望を安易に受付けないこと。
2024.12.04
従業員から「上司の方針は間違っていると思う。上司に他の職場に移ってもらえないか。」「職場の雰囲気が馴染めない。部署変更をしてもらえませんか。」「自分ほどの能力がある人材が係長のままとは納得できない。課長に昇進して欲しい。」「給料が低くて不満だ。大幅に昇給して欲しい。」といった要望があったときに、会社として容認できない場合は当然、拒絶すると思います。
しかし、拒絶したことで「要望が通らないのであれば、会社を退職します。」と申し出られたら悩んでしまうのではないでしょうか。規模の大小に関わらず、どんな企業もタイトな人員体制で事業運営を進めていると思います。しかも深刻な状況の中では。従って、経営者にとって従業員からの退職の申し出は、最も回避したい状況ではあることは間違いありません。
「そう言わずに頑張ってください。」と回答して退職を翻意してくれればよいですが、そうでない場合は「満額回答」でないにせよ、その人材の部署異動や昇格、あるいは昇給の要望に応じてしまう会社もあります。
「今、辞めれると会社が困る。」という理由の「不本意な譲歩」ですね。
冒頭のような従業員からの要望に背景や根拠がある正当なものであればまだしも、勝手気ままであり、わがままであったりすれば別です。後者のような人材からの要望を一部でも受け入れてしまうと
従業員側が「この会社は『辞める』と脅かせば、譲歩してくる。」と味をしめて、ことあるごとに無理難題に近い要望を続けてくることになりかねません。
極端な話、「あー、この職場は忙しくて嫌だな。隣の職場は楽そうだから会社にお願いして変えてもらおう。」「課長になったけれども責任が重く、忙しい割には給料が少ない。係長の方が楽なので、降格してもらおう。」と従業員が自身の職務や職位を左右するようになります。
「部署異動」「昇格」「昇給」は会社の人事権の範疇です。従業員の要望は受け付けても、必要がなければ対応する必要はありません。会社の人事施策に基づいて必要があれば実施するだけものです。
「辞める」と脅かされて人事を行うことは、会社の経営権を放棄していることと同じ
であり、あってはならないことと認識してください。
このことはその従業員が優秀人材であっても、ローパフォーマー人材であっても同じです。「こちらの要望が通らないのであれば退職する。」と脅すがごとく申し出てきたら、臆することなく「残念だけれども仕方がないですね。どうぞ退職届を出してください。」と対応するだけです。一時は人材が不足して苦しいことになるかも知れませんが、
労務管理のイニシアティブが維持されることの方が会社にとっては余程、正常であることをお忘れなく。
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