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No.275話:「会社の権利」と「労働者の権利」を混同しないこと。

先日、クライアントから「従業員から病気療養を理由とした1ヵ月の『休職願い』が提出されたのですが、医師の診断書では「10日間の療養を要する」というものだったので『休職』を認めませんでした。ところが従業員から『労働者が申請した休職が認められないことは納得できない』と異議申し立てがありました。『休職』は従業員の希望通りに取得させる必要があるのでしょうか」というご相談をいただきました。

「休職」という制度は労働基準法に基づかない、会社ごとの任意の制度です。要するに「休職」制度を整備するか否かは「会社次第」ということになります。任意ではあるのですが、多くの会社では傷病療養者を対象とした「休職」制度が就業規則に整備されてるのが一般的です。

私的な傷病で長期に会社を休んで労務の提供ができないことは、雇用契約における「債務不履行」にあたり、本来は会社として雇用契約を解除してもやむを得ない事態にあたります。しかし、労働者に配慮して「一定期間」療養を認めることで職場復帰可能となることが期待できる場合は、雇用契約を維持する方が労使双方の利益になることから「休職」制度を設ける会社が多いのです。

さて、問題はこの「休職」制度は「会社の権利」か「労働者の権利」かということです。就業規則における書きぶりにもよりますが、「職場復帰が見込めるのであれば、一定期間の休みは認めましょう」というものが「休職」の目的であり、会社の判断に委ねられるものですから「会社の権利」として設定しているのが一般的です。従いまして、多くの会社では就業規則において「会社は休職を命じることができる」という記述になっていると思います。

ところが、この「休職」が「会社の権利」であることを認識せずに、「病気で長期療養が必要なのだから、休職させてもらって当然だ」と「休職」申請をしてくる労働者がいます。しかも冒頭の相談例のように、医師の診断書に「10日間の療養」としているにもかかわらず、「1ヶ月ほど休ませてもらおうかな」という軽いノリで申請してくるようでは、「休職」を「労働者の権利」と勘違いしているとしか言えません。

冒頭のような異議申し立てには「休職を命じるから否かは、会社が診断書に基づき会社が判断することです。会社の決定に従ってください」と答えればよいのですが、「どうすればいいのか」と相談があるということは、実は「休職」が「会社の権利」か「労働者の権利」か、「よくわかっていない」人事担当者が多いのです。

「よくわかっていない」程度であれば、調べたり専門家に相談したりすれば解決しますが、「会社の権利」であるものを、「労働者の権利」と間違えて、労働者の申請通りに「休職」を認めてしまうと、それ以降は「労働者の権利」として定着しかねませんから、人事担当者としては「権利」の所在を間違わないようにすべきです。

「休職」に限らず、就業規則には「会社の権利」「労働者の権利」だけではなく、「会社の義務」や「労働者の義務」についても規定されています。どれか該当するかは条文をよく読み解くことです。すなわち、条文の主語は「会社」か「労働者」のどちらか、そして結語は「することができる(権利)」か「ねばならない(義務)」かのどちらかであるかを確認することです。「権利」「義務」の所在を正確に認識するだけでも、労務管理能力が格段に向上しますから是非、就業規則を読み返してみてください。

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