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No.281話:従業員を「経費」と見るべきか。「資本」と見るべきか。

「人的資本経営」という言葉が使われるようになって数年が経ちます。さて、経済産業省では「人的資本経営」とは人材を「コスト」ではなく「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方としています。

すなわち、従業員の能力や経験、意欲といった無形資産に投資し、企業全体の競争力と成長力を高める視点に基づいています。ゆえに「従業員エンゲージメントの向上」といった取り組みが各企業で推進されるに至っているわけです。

以前より実施され、バブル崩壊後の数年間は停滞していた従業員のスキルアップを目指した社内研修も、「人的資本」への「投資」の一環ということで見直され積極的に取り組むようになっています。また、職場のハラスメント防止対策に会社側が躍起になって取り組むことも、従業員がモチベーションを下げ、「退職」という「人的資本」の流出という最悪の事態を回避したいがため故にということです。

このような「人的資本経営」という世の中の動きは、「資本」である従業員を大切にする風潮につながり、社会においても喜ぶべきことです。とはいうものの、やはり人材は「コスト」でもあることを忘れてはならないと思います。「資本」として人材に「投資」を積極的に行っても、それに見合う「リターン」がなければ「経営」とは言い難いと思います。

例えば、莫大な費用をつぎ込んで、スキルアップ研修プログラムを従業員に提供しても、業務に必要とされるスキルや資格を何年たっても習得することができなければ意味を成しません。漸くにしてスキルや資格を身に着けても、それを持って他の会社に転職されるようでは「元も子もない」と言わざるを得ません。

「投資」は、それ以上のものを回収して初めて「投資」といえると思います。回収できなければ「投資」ではなく、「費用(コスト)」であり収益でマイナスとなれば「損失」ということです。すなわち、「資本」として人材に多くの「投資」をすることは良いのですが、「人的資本経営」に取り組む以上は、どれだけ頑張っても「損失となることもある」ということを理解することです。

従業員という人材は会社にとって「財産」でありますが、一方で「コスト」であることも事実です。このような側面があることを忘れて「人的資本」という言葉に惑われて、獲得もしていない「リターン」を夢見るだけで、適宜の検証を疎かにすることはないようにしましょう。振り回される従業員は堪ったものではありませんからね。

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