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No.298話:人材はコスト?それとも投資?

近年、ビジネス誌や経済ニュースを賑わせているのが「人的資本経営」という言葉です。上場企業では情報開示が義務化され華々しい指標が並びますが、中小企業の経営者の中には、「それは体力のある大企業の話だ」「人手不足でウチはそれどころではない」と感じている方も少なくないでしょう。

しかし、多くの企業の労務実態を垣間見てきた者としては、「人的資本経営」という考え方が最も大きな効果をもたらすのは、そのリソースの限られた中小企業に外ならないと感じています。

多くの企業において、人件費はPL(損益計算書)上の最大の「費用(コスト)」として扱われます。景気が悪くなれば、まず削るべき対象として議論に上がる。これが従来の考え方でした。

しかし、「人的資本経営」の本質は、従業員を「消費されるコスト」ではなく、「価値を創造する資本(投資対象)」と捉え直すことにあります。機械設備や不動産は購入した瞬間から劣化が始まりますが、「人」という資本だけは、磨き方(育成)次第でその価値が2倍、3倍へと膨らんでいく唯一の経営資源であると思うのです。

今、日本の中小企業が直面している最大の危機は、言うまでもなく深刻な労働力不足です。かつてのように、「給与さえ払えば人が集まる」時代は終わりました。特に若手人材は自身のスキルが向上するか、その会社で働くことが自身の市場価値を高めるか、という「自己成長の可能性」をシビアに見極めています。

「人的資本経営」に取り組まないということは、単に開示を怠ることではありません。それは、「この会社にいても成長できない」というメッセージを市場に発信し続けることに外ならないのです。

優秀な人材から順に流出し、残された従業員の負担が増え、生産性がさらに低下する。この負のスパイラルを断ち切る唯一の鍵が、経営戦略と連動した人材投資なのでは無いでしょうか。

中小企業の「人的資本経営」は、決して難解なKPIを並べることではありません。「経営戦略の実現に、どのような『スキル』を持った人材が何人必要か見える化できているか」「その人材を確保するために、採用ではなく『育成』にいくら投資しているか」「社員一人ひとりの幸福(ウェルビーイング)が、会社の利益に直結する仕組みがあるか」、そんな問いかけから始めることにあるのではないでしょうか。

これまでは、労務管理はややもすれば「トラブルを起こさないための守りの姿勢」でした。しかしこれからは、「個の力を最大化し、組織の競争力に変える攻め」の人事戦略が必要です。社長の右腕となる人材が育たない、離職率が下がらないといった悩みは、すべて「人的資本への投資不足」という構造的な問題に帰結するということです。

「人的資本経営」とは、流行りのビジネス用語でも、大企業のパフォーマンスでもありません。「社員の成長こそが、会社の成長である」という経営者の覚悟につなげる言葉です。

「ウチのような小さな会社にできることなんて無い」と諦める前に、まずは社員一人ひとりと向き合い、彼らの可能性をどう引き出すかを議論してみませんか。その一歩が、10年後も生き残り、輝き続ける会社を創る土台となるのではないでしょうか。

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