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No.299話:労働者の「熱意」と会社の「法的責任」は別次元です。

目の前に「長時間残業や休日出勤をしてでも、納得いくまでこの仕事をやり遂げたいです」と仕事に対して意欲を見せる部下がいたら、経営者としてどう感じますか。「最近の若手は」で始まるいつもの風潮の中で、その言葉は非常に頼もしく思うのではないでしょうか。そして、そのガッツを高く評価し、応援したいと思うのは、経営者として極めて自然な感情だと思います。

しかし、その「頼もしく思う気持ち」をそのまま「額面通り受け取る」、あるいは「他の従業員もかくあるべき」という「推奨」に変えてしまうことは、現在の労務管理において「リスクが高い」と言わざるを得ません。

残念ながら、労働基準法をはじめとする労働法令は、労働者の「同意」や「やる気」があるからといって、その法律に違反することも免除されるということになりません。たとえ本人が「好きでやっている」「残業代はいらない」と言ったとしても、法定労働時間を超えれば割増賃金の支払い義務が生じますし、長時間労働による健康障害が発生すれば、企業は「安全配慮義務違反」を問われます。つまり「本人の熱意」と「法的責任」は別次元であるということです。

皮肉なことですが、「責任感の強い社員」ほど、心身の限界を超えてもブレーキをかけられず、ある日突然燃え尽きてしまう(バーンアウト)リスクが高いのです。彼らの熱意を信じて任せきりにすることは、裏を返せば「彼らの健康リスクを放置している」ことになりかねません。

では、その素晴らしい熱意を削ぐことなく、健全に伸ばしていくためにはどうすればよいのでしょうか。まず、一つ目は「仕事の完結」を労働時間から切り離すことです。「最後までやり切る」ことを、時間の投入量で評価する文化を脱却することです。短時間で高い成果を出す仕組みを構築することこそが、プロフェッショナルとしての「仕事の完結」であると再定義し、生産性向上に光を当ててください。

二つ目は「ノーと言える」環境の担保することです。熱意ある部下は、過度な業務量でも「できません」と言い出せない傾向があります。上司の側から「今のリソースで質を保てるか」と定期的にヒアリングし、必要に応じて業務を間引く、あるいは期限を調整する「交通整理」が不可欠です。

三つ目はインターバル(休息)の重要性を説くことです。一流のアスリートが休息をトレーニングの一部と捉えるように、ビジネスにおいても休息は「次のパフォーマンスのための準備」ということを理解させることです。「明日も最高の状態で仕事に向き合ってほしいから、今日はここまでだ」と、経営者自らがストッパー役を担ってください。

「長時間労働を厭わない」という精神性は、短期的には爆発的な成果を生むかもしれません。しかし、企業の成長はマラソンです。個人の善意に依存した無理な「仕事の完結」は、いずれ離職やメンタル不調、あるいは労働基準法違反という形で、組織に大きなダメージを与えます。

労働者の熱意に共感するからこそ、その熱意が長く、太く燃え続けられるような「外枠(制度と環境)」を作るのが、経営者の真の役割ではないでしょうか。「情熱」は労働者のものですが、その「安全」を守るのは、他ならぬ経営者であるあなたの義務ということを忘れないようにしましょう。

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