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No.306話:業務の「属人化」は「人事マネジメントの敗北」です。

「あの仕事は、彼に任せておけば安心だ」経営者にとって、これほど甘美で、かつ危険な言葉はありません。特定の業務を特定の従業員に任せている状態、いわゆる「属人化」は一見、効率的な役割分担や「職人の技」のように見えますが、その実態は組織の首を絞めかねない「リスクの塊」です。

では、なぜ「属人化」が放置されるのでしょうか。それは、短期的には会社側にとって「楽」だからです。確かに、教育の手間が省け、阿吽の呼吸で仕事が進むという状態は「良いことづくめ」です。しかし、その「楽」の代償として、組織を極めてリスキーな状態に陥らせていることになります。

「属人化」の最大のリスクは、その担当者が「不在」となったときに瞬く間に顕在化します。急な病気、事故、介護、そして退職。その従業員に何が起こるかわかりません。一人のエース人材に依存していた業務がブラックボックス化していると、その人が「不在」になった途端、進捗の確認すらままならず、顧客への対応がストップします。これは単なる「遅延」ではなく、企業の「信用失墜」に直結する事態です。

加えて「属人化」した業務は、第三者の目が入りません。そこでは「もっと効率的な方法があるのではないか」「この工程は無駄ではないか」という客観的なチェックが働きません。担当者が独自のやり方に固執し、それが「聖域」となってしまうと、組織全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)や標準化は阻害され、旧態依然とした非効率なプロセスが温存される恐れがあります。

また、皮肉なことに、「属人化」は真面目な従業員ほど苦しめてしまいます。「自分にしかわからない」というプレッシャーは過度な負担となり、メンタルヘルスの悪化を招きます。また、チェック機能が働かない環境は、意図しないミスの見逃しや、最悪の場合、横領などの不正を誘発する温床となります。「誰も見ていない」環境は、「魔が差す」事態を招きかねません。

このリスクを回避するために、経営者が今すぐ取り組むべきは、業務の「マニュアル化」です。「仕事は背中を見て覚えろ」は、現代の組織運営では通用しません。誰が担当しても80点の成果が出せるマニュアルを整備し、仕事のプロセスを可視化することが大切です。次に「ジョブ・ローテーション」の実施です。定期的に担当者を入れ替えることで、業務を特定個人の所有物から組織の共有財産へと戻します。そして、「チーム制」の導入です。一つの業務を常にメインとサブの2名体制で把握させる「バックアップ体制」の構築を図ることです。

「あの人がいなければ回らない」という状態は、個人の能力を讃えているようでいて、実は「人事マネジメントの敗北」を意味します。本当の組織の強さは「仕組み」に宿ると考えましょう。その人がいなくても仕事が回る仕組みを作り、個人が安心して休み、安心して次のステップへ挑戦できる環境を整えることこそが、本当の意味で従業員を大切にするということではないでしょうか。

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