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No.313話:退職金制度改革に取り組むときに留意すべきこと。
2026.06.24
厳しい経営環境への対応や、労働人口の減少に伴う「現役世代への人件費の効率的配分」を目的に、退職金制度の見直し(ポイント制への移行や基礎額の引き下げ)、さらには制度そのものの廃止に踏み切る企業が増えています。
しかし、永年従業員の安心を支えてきた退職金制度に手を付けることは、法的・心理的に極めてハードルの高い課題です。
安易な変更は、労働契約法第9条の「不利益変更」の問題に発展しかねません。
そうならないためにも、同法第10条における、就業規則の変更が有効と認められるための「合理性」をクリアする、次の3つの点に留意して取り組むようにしましょう。
1.変更の「合理性」を客観的に証明できること
退職金引き下げの際には、「経営危機の程度」、すなわち
「なんとなく将来が不安だから」では不十分です。
企業の存続に関わるレベルの財務データや、業界の構造的変化を示す客観的な根拠が必要です。
また、「変更の必要性」として、「人件費を現役世代(月給や賞与)へシフトするため」という目的であれば、単なる総人件費の削減ではなく、原資がどう再配分されるのかといったことを明確に説明できるようにしなければなりません。
2.「代償措置」と「経過措置」の整備
判例上、一方的な不利益だけを強いる改定はほぼ無効化されます。従って、
激変を緩和する設計が不可欠となります。
具体的には、「代償措置」として、退職金を減らす分、月々の基本給や業績連動賞与の掛け率を引き上げる、あるいは確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)への移行原資とするなど、「別ルートでの報い」を用意することです。
そして、「経過措置」です。いきなり「来月から全員一律3割カット」ではなく、例えば、5年〜10年の移行期間を設け、定年を間近に控えたシニア層への影響を最小限に抑える段階的導入が必須ということです。
3.「誠実な協議」による従業員との合意形成
最も重要なのは、手続きのプロセスです。いくら精緻なポイント制を設計しても、経営陣の一方的な通達では従業員のエンゲージメントは崩壊し、有能な若手・中堅の離職を招きかねません。そうならないためにも、従業員代表や労働組合に対し、経営状況と変更の理由を開示し、また、個別の説明会を重ね、不利益を被る従業員に対して「なぜ必要なのか」「どう報いるのか」を
経営者自身の言葉で、誠実に説明し納得(合意)を得る努力を尽くすことです。
退職金制度の見直しは、単なる「コストカット」として進めると必ず失敗します。経営者が留意すべき本質は、この改革を「これからの会社を支える現役世代への投資」として位置づけて取り組むことです。法的なリスクをクリアすることは大前提。その上で、
従業員の未来に対する誠意あるストーリーを語れるかどうかが、経営者の覚悟と腕の見せ所となります。
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