『人事労務戦略』構築専門のコンサルタント 株式会社サムライズ

0798-36-7188

無料メルマガ登録

今週のコラム、各種ご案内をお届け中です。ぜひ、ご登録ください。

登録解除

No.315話:人材流動化時代において「選ばれる」「人材が残る」企業とは

「他社に負けないよう給与水準を上げたのに、なぜか若手や中堅が定着しない」、多くの中小企業経営者から、このような悲痛な声が寄せられます。「給与への不満」は、退職届に書かれる最も都合の良い表向きの理由に過ぎません。では、その裏に隠された、経営者が気づきにくい離職の本当の原因は何でしょうか。

〇「大過なき評価」がもたらす、優秀な人材の絶望

退職の本質的な原因として真っ先に挙げられるのが、「評価制度の不透明さ」です。特に中小企業において、評価が社長の主観や声の大きい幹部の印象だけで決まってしまうケースは少なくありません。基準が曖昧な環境では、真面目に成果を出している従業員ほど「自分の貢献が正当に見られていない」と不満を募らせます。

「一律でベースアップをしたから満足だろう」というのは経営者側の錯覚です。一律の昇給は、裏を返せば「成果を出していない人と同じ扱いをされた」という優秀層の離職の動機になります。「信賞必罰」という言葉の通り、「誰が、なぜ、どのように評価されたのか」というプロセスがブラックボックス化している職場からは、自立的な人材ほど早く見切りをつけて去っていきます。

 

〇時間を切り売りさせる「常態化した時間外労働」の代償

次に、労働時間と心身の摩耗です。どれほど高い給与を支払っていても、「時間外労働の常態化」は確実に従業員の愛社精神を蝕みます。現代の労働者は、かつてのように「滅私奉公」で働くことを美徳とはしません。自分の時間や家族との生活、自己投資の時間を犠牲にしてまで、お金のために働き続けることへの疑問を常に抱いているのです。

確かに残業代がしっかり支払われていれば法的な問題はありませんが、従業員の心のバロメーターは別です。「この会社にいると、自分の人生の時間がすり減っていく」と感じた瞬間、彼らは転職市場へと目を向けます。

 

〇経営者が今すぐ見直すべき、現代の「心理的安全性」

給与とは「過去の労働に対する対価」です。一方で、従業員が会社に留まるかどうかを決めるのは「未来への期待」に他なりません。不透明な評価による不信感や、過度な労働による疲弊は、職場から「心理的安全性」を奪います。ミスを恐れて萎縮する職場、上司の顔色を伺う環境では、どれほど給与が高くても「ここで働き続けたい」というエンゲージメントは育ちません。

「桃李(とうり)、もの言わざれども、下(した)自ら蹊(みち)を成す」という言葉があります。美しい桃や李の木には、何も言わなくてもその果実を慕って人が集まり、自然と道ができるという意味です。企業の労務管理も全く同じです。

 

給与という目に見える果実だけを大きくするのではなく、従業員が納得して働ける評価の仕組み、心身ともに健康を保てる労働環境という「土壌」そのものを整えること。それこそが、人材流動化時代において「選ばれる」「人材が残る」企業になるための唯一の道といえるのではないでしょうか。

コラム一覧

無料メルマガ登録

今週のコラム、各種ご案内をお届け中です。ぜひ、ご登録ください。

登録解除